本研究では、20世紀アメリカの経済学者たちが展開した「市場経済」と「社会正義」をめぐる論議を、「自由な社会の条件とは何か」という問いをめぐる議論の系譜に位置づけ直し、その歴史的意義と現代的な含意を明らかにした。特に従来はそれぞれが異なるタイプの自由主義に与するとされてきた、フランク・ナイトとジョン・ロールズの知的影響関係に注目し、市場経済の規範的評価の内実やその背景にある自由や討議をめぐる考察の共通点や相違を明らかにすることで、20世紀アメリカにおける自由社会構想の系譜について、従来とは異なる新しい理解を提示することが出来た。
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