研究課題/領域番号 |
15K03392
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 賢悟 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (50549780)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 計量経済学 / モーメント不等式モデル / 部分識別 |
研究実績の概要 |
モーメント不等式モデルとは、関心のあるパラメータがモーメント不等式制約によって定義されるモデルであり、近年の計量経済学において多くの関心を集めている。モーメント不等式モデルにおいては、パラメータが点識別されることはまれであり、多くの場合、モーメント不等式をみたすパラメータ集合 (識別集合と呼ばれる)が得られる。本研究課題の目標は、不等式数が標本サイズよりも大きいような場合にも有効な、識別集合内の各パラメータへの統計推測手法を確立することである。このような大規模モーメント不等式モデルは経済学の実証分析においてしばしば現れ、例えば、エアライン市場へ参入退出を考察したCiliberto and Tamer (2009,Econometrica)では、市場に参入する可能性のある航空会社の数をmとすると、モーメント不等式の個数は2の(m+1)乗であり、mに依存してかなり大きくなりうる。 前年度は、理論解析に必要な確率論的手法を整備した。これらの結果をベースにして、大規模モーメント不等式モデルに対して、最大値型の統計量に基づく統計推測手法を提案し、その結果をまとめた論文を査読付き学術誌に投稿して、改訂要求を得た。本年度は、査読者からのコメントに従い、同論文の改訂に従事した。特に、同論文で考察した最大値型の統計量を少し変形した統計量の可能性を模索した。また、同論文と関連する結果である、高次元中心極限定理やブートストラップ近似定理を広めるために、国内外で講演を行った。次年度において、同論文の改訂を進めるために、共同研究者であるUCLAのChetverikov教授を訪問する予定である。その他に、Handbook of Quantile Regressionのうち、2チャプターを共同で担当し、高次元分位点回帰モデルとパネルデータに対する分位点回帰法の研究概要をまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模モーメント不等式モデルに対する統計的推測手法を考察した論文については、権威ある国際学術誌である、Review of Economic Studiesから改訂要求を得ている。経済学のトップジャーナルにおいてはよくあることだが、査読者からの改訂要求がかなりdemandingであるため、改訂作業に時間をとられているが、前年度の成果と総合して、順調な進捗状況と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続きになるが、Review of Economic Studiesから改訂要求が来ている論文の改訂作業を行い、最終的にアクセプトまでもっていく。改訂作業を円滑に進めるために、共著者であるUCLAのChetverikov教授を訪問する。同論文はまだワーキングペーパーであるが、他の研究者から高い関心を集めているようであり、実証分析への応用も進んでいるようである。いまのところ理論研究にとどまっているが、他の研究者と協力しつつ、大規模モーメント不等式モデルに対する実証研究も進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
英語の専門書の購入を考えていたが、出版が翌年度になったため、少し金額が余ってしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が2万円未満と少額のため、特別の計画は不要と考える。
|