最終年度では高頻度データを用いた下方リスクの測定とリスクマネジメントへの応用研究という本研究課題に即して以下の3点の研究をおこなった。第一に、平成27年度ではバリュー・アット・リスクや期待ショートフォールといった下方リスクを最小にするような先物取引によるヘッジ比率の推定方法を提案したが、exponential spectral risk measureやlower partial momentと呼ばれる下方リスクを最小にする場合の検証をおこなった。その結果、本研究で提案したヘッジモデルは、こうした下方リスクのヘッジに対して有効であることが判明した。 第二に、平成28年度で推計した日本のオプションデータから推計されるインプライドジャンプリスクを用いて、クレジットスプレッドに対する予測可能性の分析をおこなった。日本のインプライドジャンプリスクは格付けのグレードがシングルAといった、ダブルAやトリプルAに比べて低いクレジットスプレッドや、デフォルトスプレッドに対して強い予測力をもつシグナルとして有用であることが判明した。第三に、高頻度データと閾値を用いた手法を用いて、日本の株価指数の事後的なジャンプリスクを推計した。閾値を決める際の手法を工夫して計測を試みた結果、ジャンプの生起確率が日内変動する可能性や、記録的な株価指数の変動時にジャンプ変動は高い寄与度を有することなどが明らかとなった。日本のジャンプリスクの解明とその応用可能性に寄与した本研究成果を世界に発信することができたという点で大きな意義があると言える。
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