研究課題/領域番号 |
15K03405
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
蛭川 雅之 摂南大学, 経済学部, 教授 (10597628)
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研究分担者 |
作道 真理 一般財団法人日本経済研究所, 調査局, 研究員(移行) (70748954)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ノンパラメトリック計量経済学 / 接合データの計量経済学 / 非対称カーネル関数 / 回帰不連続デザイン |
研究実績の概要 |
平成28年度は、研究代表者・研究分担者合計で2本の論文を英文査読誌に掲載し、国内外の学会・セミナー等で9回論文を発表することができた。掲載論文の本数、論文発表の回数とも前年度に比べて著しく増加した。 当該年度に実施した研究は前年度からの継続案件が中心であった。具体的には、①一般化ガンマ・カーネル関数の適合度検定への応用、②非対称カーネル関数を用いた回帰不連続デザインの妥当性に関する検定、③最近傍法に基づく接合データを用いて線形回帰モデルを一致推定するための手法の提案の3点それぞれに関し、研究の仕上げを行った。 ①に関しては、Hirukawa and Sakudo (2015)で提案された一般化ガンマ・カーネル関数を分布の対称性検定に応用し、検定統計量の漸近的特性を導出し、検出力を最適化する平滑化パラメータ選択法も提案した。これらの結果をまとめた論文は英文査読誌に掲載された。 次に、②に関しては、確率密度関数に不連続が疑われる点が唯一つ存在する場合のガンマ・カーネル関数を用いた検定法を提案した。本研究では、検定統計量の漸近的特性を導出する際に不完全ガンマ関数の漸近展開を用いた点に新規性があり、結果をまとめた論文は英文査読誌から改訂後再投稿を要求され、現時点で再投稿後の審査中である。 最後に、③に関しては、接合データセットを用いた最小二乗推定量は一致性を持たないこと、および、ノンパラメトリック法に基づく2種類のバイアス修正法により一致性を回復できることを証明した。これらバイアス修正推定量の優れた小標本特性もモンテカルロ実験を通じて確認できた。なお、②と同様、結果をまとめた論文は英文査読誌から改訂後再投稿を要求され、現時点で再投稿後の審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に研究を予定していた課題各々について「研究実績の概要」に記述した結果を出すことができたため、「おおむね順調」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降の研究は「研究実績の概要」に記述した3課題の発展・拡張を中心に行う計画である。 具体的には、課題①に関連して、非対称カーネル関数を用いた確率密度推定と新たな乗法バイアス修正法との組み合わせ、あるいはノンパラメトリック回帰推定に関するバイアス修正法の開発を検討中である。また、課題②に関連して、確率密度関数に複数の不連続点の存在が疑われる場合の同時検定への拡張を検討している。さらに、課題③の発展・拡張として、分析対象とするモデルの拡張(例:可変係数回帰モデル、内生性を持つ説明変数を含む回帰モデル、分位点回帰モデル)、より精度の高いバイアス補正推定量の開発、傾向スコアを用いた最近傍法の導入等の諸問題に取り組みたい。本課題は特に応用面での需要が大きいと思われるため、経済分析で標準的に用いられる統計ソフトStataのプログラム公開も随時行う必要があると考えている。 なお、各課題の研究成果は随時論文にまとめる。最終的に研究論文全数を計量経済学・統計学の主要英文学術誌へ掲載する目標を持っている。加えて、今年度と同様、計量経済学・統計学に関する国内外の学会で積極的に研究報告を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文発表を行う学会を当初予定から変更したこと、およびソフトウェア等の購入計画を一部変更したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表の計画をより精緻化し、ソフトウェアを購入する予定である。後者については、Stata最新版(200,000円程度)、Scientific Word最新版(80,000円程度)を想定している。
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