研究課題/領域番号 |
15K03409
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大山 睦 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (20598825)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 製品ラインの選択 / 技術革新 |
研究実績の概要 |
データを用いて企業の製品選択に関するメカニズムを明らかにすること、企業の製品創出と産業成長に関する実証分析を行うことが本研究の目的である。企業の製品選択や製品創出は企業の人的・物的資源や企業の競争力と強く結びついている。したがって、企業の製品選択のメカニズムを明らかにすることは、企業成長や産業発展の源泉に関する洞察を得ることができ、本研究が学術的にも政策的にも重要な貢献をすると期待される。 この研究目的を達成するための重要な要素は、(1)詳細な実証分析を行うために必要なデータベースを構築すること、(2)製品分類、人的資本、物的資本、需要ネットワークなどのデータを有意義に定量化すること、(3)様々な角度から企業の製品選択に関してデータ分析すること、(4)厳密な実証分析の手法を用いて分析を行うことである。 平成27年度の主な作業はデータベースの構築であり、この作業を引き続き平成28年度も行った。既存研究ではデータ不備により、企業の製品選択における技術的な要因と需要要因を区別することができなかった。したがって、本研究で詳細なデータを集めて、電子化する作業は、企業の製品選択に関する新しい知見を得るためには重要な作業である。 平成28年度の主な作業と成果は、実証分析を行うことにより、企業の製品選択のパターンを発見したことである。これは研究目的を達成するための上述の(2)と(3)に該当する作業である。実証分析の主な結果は、(a)多くの種類の製品を生産している企業は、新たな製品を市場に投入する確率が高い。これは先行研究と同様の結果である。(b)ある製品群で質の高い製品を供給していると、 新たな製品群でも質の高い製品を供給する。これは先行研究や理論分析とは異なる結果である。 実証分析の主な結果は更なる検証が必要であり、この作業は平成29年度に実施する作業となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度から実証分析を本格的に行う予定であった。特に、(1)企業の製品選択のパターンを見つけ出し、そのパターンが発生する要因を企業の特性に結びつけて分析すること、(2)企業の製品選択のパターンと利益率や生存率などの企業パフォーマンスとの関係を明らかにすること、(3)企業の製品創出と産業成長の関係をデータで捉えることを目的としていた。 当初の予定通り、この分析作業に着手することができた。特に、様々な角度からデータを分析することにより、先行研究とは異なる製品選択のパターンを見つけ出すに至り、これは平成28年度の成果の一つである。この成果は企業の製品選択に関するメカニズムを解明するきっかけとなり、今後の研究の方向性が固まった。平成29年度には、分析や洞察を深めて、研究成果をまとめる。企業の製品創出と産業成長の関係に関しては、創造的破壊が産業成長に大きな役割を果たしていることが確認できた。 しかしながら、データ分析を通じて、課題も見つかった。具体的には、データベースに不備があり、製品分類が厳密になされていなかった。この問題を解決するために、製品分類に関するオリジナルのデータと企業行動の間にタイミングにズレが生じており、複数のデータソースによってこのことを確認し、修正作業を行った。データベース分析の精度を上げるためには、さらなるデータ収集、データの質のチェックが必要となり、この作業に時間を割かなければならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の最大の目標は研究成果をまとめて、複数の論文を執筆し、国際学術誌に投稿することである。この目的を達成するために、最初に平成28年度に行ったデータ分析の結果の検証を更に進めて、企業の製品選択に関するメカニズムの洞察を得る。現時点では、単純な計量モデルを使って分析を行っているので、より厳密な計量経済分析の手法を用いて分析を行う。特に、因果関係の特定に最大限の努力を注ぐつもりである。主な分析結果を得た後は、結果の頑健性をチェックし、研究成果として論文にまとめる。論文を執筆した後は、国際学会やアメリカの大学の研究会で研究成果の報告を行う予定である。そこで得られたフィードバックをもとに、データ分析の再検証や論文の修正を行い、論文を完成させる。
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