本研究は、タイを中核とするメコン経済圏における生産ネットワークについて、①それが深化するための条件、②受入国の経済効果、③中国・インドへの展開の可能性について研究することが目的である。 第一の「生産ネットワークが深化するための条件」については、これまで、メコン経済圏における国境開発の課題を学術書の章としてとりまとめ、生産工程の分散化を説明するフラグメンテーション理論の適合性についてメコン地域を含む東アジアを対象に研究を行い、その成果を査読付英文雑誌に掲載した。さらに、学会において、タイから広がる生産ネットワークであるタイ・プラスワンの周辺国への波及過程について発表を行った。 第二の「生産ネットワーク受入国の経済効果」については、付加価値貿易のデータを活用した生産ネットワーク受入国のGDPへの効果の推計や、直接投資の受入れによる経済効果の測定を行い、学会発表を行ってきた。また、ミャンマー・ラオス等の資源開発やタイへの移民からの海外送金収入が、生産ネットワークの核となる製造業の発展を妨げているか否か(いわゆるオランダ病存否)について研究を進め、その成果を査読付英文雑誌に掲載するとともに、学会発表を行った。本年度においては、ミャンマー・ラオスを含むASEANの資源開発によるオランダ病の検証、ベトナムの生産ネットワーク受入の経済効果の検証を行い、それらの成果を査読付英文雑誌に掲載した。 第三の「生産ネットワークの中国・インドへの展開の可能性」については、中国とASEAN、インドとASEANとの自由貿易協定の締結が貿易結合度や生産ネットワークに与える影響について検証を行い、その成果を査読付英文雑誌に掲載した。本年度においは、貿易自由化の経済効果に関する研究レビューを報告書にとりまとめるとともに、中国の生産ネットワーク受入の経済効果の検証を行い、その成果を査読付英文雑誌に掲載した。
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