本研究の目的は、グローバル都市(バンコク)に注目し、都市のダイナミズム、内部構造と階層性を理論的、実証的に明らかにすることである。バンコク内格差の再編動向を、空間的な特徴も視野に入れながら分析している。その上で、アジアのメガ都市分析における新しい視角、アプローチに関しても検討を行った。 本研究の成果は、第1に新興国のメガ都市、インフォーマリティや格差を巡るイシューや問題の構図の整理を行ったことである(『現代アジア経済論』有斐閣)などに成果の一部を反映)。第2に、バンコクの機能、地理的特徴の分析や政策分析など、メゾマクロレベルの分析を行った。バンコク、およびメガリージョンは、グローバルに展開されるバリューチェーンの結節点として機能し、タイの産業の大部分が集積しているが、一方で、地域間格差、都市内格差は2010年代に入りますます拡大をし続けている。災害管理などの都市運営では、地元の生活者のニーズよりも、グローバル都市の機能強化が優先される事態が生じ始めている。またインフォーマルな職種の都市空間からの締め出しや、ジェントリフィケーションが顕著に進み始めていた(「地域経済学研究」論文など)。一方では、インフォーマル経済従事者や低所得者層の社会保障制度への包摂の動きがあるものの(「東亜」論文など)、他方では、前述のような都市空間からの排除が同時に進んでいるのである。 以上をふまえて、第3に他の研究プロジェクトと合同で大規模質問票調査を実施した。またインフォーマル経済従事者やスラムコミュニティの住民などに対するインタビュー調査なども行ってきた。マクロ統計データ(個票)分析と合わせて、これらの分析は継続中であり、最終的には単著にまとめたい。第4に、国内外の学会発表のみならず、ケルン大学(ドイツ)の研究者とアジアのメガ都市に関するワークショップシリーズを立ち上げ、理論の再検討を進めている。
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