研究課題/領域番号 |
15K03417
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芦田 登代 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (80724898)
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研究分担者 |
近藤 尚己 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (20345705)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害 / フィールド実験 / 高齢者 / 時間割引 / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東日本大震災の被災地で実験経済学の手法を応用したフィールド実験を実施し、被災者の選好を計測することである。選好は経済行動の意思決定要因とされるものである。海外では、自然災害等のショックによって人々の選好が変化することが報告されており、例えば、自然災害や内戦等の人的災害に暴露された人はそうでない人よりもリスク回避的になり、より高い時間割引率を示す傾向が報告されている。そこで、本研究においては、文化の異なる日本の高齢者を対象として、2度目の実験を行い、災害からの長期的影響を観察するものである。 当該年度実施の経済実験は、2014年に実施したベースライン調査の項目にDMPL(Double Multiple Price List)法も追加し、海外で実施された結果とより比較可能になるように設計した。そのために、12月にフィールド実験のプリテストを実施し、改めてリサーチクエスチョンを明確にした上で、全体の項目数の調整等を行った。 対象者の選定については、本年度10月~12月にかけて日本老年学的評価研究(JAGES)健康とくらしの調査において、対象自治体に居住する65歳以上の高齢者全数に調査が行われ、その調査票の中で、経済実験参加希望の有無を質問した。その希望した人の中から被災の程度と居住地域情報を考慮して、対象者を選定した。対象者には、実験実施案内を郵送し、最終的に実験参加の承諾を得た人に対して、2~3月にかけて、実験を実施した。 2017年度には、データ構築・解析をし、研究成果を報告するとともに論文をまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
、今年度の計画は、東日本大震災被災地において、高齢者を対象とした経済実験および社会調査を実施することであった。実験実施時期については、実施自治体の事情で、やや遅れたが、実験自体は完了したため、本年度の目的は果たせたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析を開始し、ベースライン調査でも用いたAndreoni and Sprenger(2012)によって開発されたConvex Time Budget(CTB)法によって、時間選好の変化を把握する。また、JAGESプロジェクから「健康とくらしの調査」データの提供を受け、経済実験のデータとIDによって接合させる。このパネルデータを計量経済学的手法である「差の差の分析Differences-in-Differences(DID)」といったより厳密な手法を用いて分析し、災害復興期における高齢者の暮らしへの影響や生活再建の現状をより緻密に把握する。 研究成果については、協力自治体や実験参加者に報告するとともに、国内外の学会や査読付きの学術雑誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験等の実施について、当初の予定より遅れて年度末の実施となった。そのため、本年度に計上していたデータ構築やデータ整理のための人件費を次年度に繰り越して、使用することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、学会等での報告旅費や論文投稿費用に充てる計画である。
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