本研究の目的は、都道府県間の産業別生産性格差の計測をより精緻化するため、都道府県間のサービス価格差を測定し、それを考慮に入れた生産性格差の再推計を行うことである。同時に、測定された都道府県間サービス価格差について、1人当たり生産性との相関の有無や、サービス産業内の産業別分解によってより掘り下げて分析することである。まず「小売物価統計調査」から、広義のサービス業に該当する品目別価格原データを1955年から最近年までの毎年データ入力した。さらに、このデータを使って5年ごとにRao and Tinner(2000)らCountry-Product-Dummy Methodによってサービス産業内の各産業分野別に都道府県間サービス価格差を推計した。この手法は国際経済学の分野において絶対的購買力平価を推計するために開発されたものであるが、品目によっては一部地域でデータが欠落しているなどの場合にも適用することが可能で、今回のデータの利用状況に適した手法であると考え採用した。推計された都道府県間サービス価格差を考慮して地域間生産性格差分析を改めて行ったところ、再計算の結果、2009年では地域間TFP格差指数の標準偏差が0.079から0.069へと約13パーセント縮小した。また、新旧の地域間生産性格差分析の副産物として地域間物価水準格差指数を求めることができる。これを使って、国際経済間で成立するバラッサ・サミュエルソン効果と類似の関係が、日本の地域経済間でも成り立つかどうかを検証し、地域間の労働生産性格差と物価水準格差の間に有意な正の相関が観察されることを確認した。2018年には海外学会で英語論文の報告を行い、その後論文を投稿し、レフェリーからの改定要求に対応して再投稿を行っている段階である。
|