研究課題/領域番号 |
15K03424
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
安藤 研一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40232095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済政策 / 経済事情 / 欧州経済統合 / 多国籍企業 |
研究実績の概要 |
本研究では,EUにおける市場・通貨統合にも関わらず,加盟各国の雇用・失業状況に大きな差異があることに着目し,そうした状況と多国籍企業の関係を分析することを主要な課題としている.多国籍企業は,より有利な立地場所を求めて容易にその活動拠点を動かしうるからであり,時に環境・労働法制の弱体化,所謂「底辺への競争」を強いるものと批判されているからである. 平成27年度には,研究の基盤を固めるために,文献・資料の収集と整理を進めながら,同時に,関連データのデータベース構築を行った.まず,EUにおける雇用・失業情勢のマクロ的なデータにより,過去10年ほどの動向,加盟国間の差異などを整理し,南欧―北欧という区分のみならず,アングロ・サクソン型,東欧型などの様相を明らかにできた. 多国籍企業の活動に関しては,EUの一機関であるEurofoundのEuropean Restructuring Monitor (ERM)から抽出したデータによって,EU域内における多国籍企業の撤退事例についてのデータベースを作成した. 撤退事例のデータベースに基づいて,EU域内における多国籍企業の撤退を分類し,その特徴などをまとめ,欧州進化経済学会において報告を行った.その際のディスカッションやコメントなどをもとに,平成28年度の研究の方向性を定める事が出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究に関わる既存研究については,購入図書等によりサーベイを進め,学会を含む研究の現状を大まかにつかむ事が出来た. EU加盟国間の雇用・失業を含む労働市場の多様性に関しては,マクロ的なデータの整理を進める事が出来た. 多国籍企業の撤退事例を含む活動状況に関しては,予定よりも順調に進んでおり,上記の学会報告でも好意的コメントを得る事が出来た. 研究初年度として予定していたことは,概ねこなすことが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度に既存研究の間隙を明らかにし,EUにおける労働市場の多様性,多国籍企業のリストラ事例などの事実確認もできたことを受け,労働市場の多様性とリストラの相互関係性を明らかにしていくことを目指す. 労働市場の多様性について,産業構造や年齢構成などのよりミクロなデータの取得,整理を行い,多国籍企業のリストラも,単に撤退のみを取り扱うのではなく,部分的なリストラ(事業縮小,従業員削減など)にも着目して,より精緻な事実確認を進める. 上記のようなデータの整理と統計的な処理により,相関関係や因果関係の有無,程度などの検証を進めていく. 数量化できる統計情報以外にも,ヒアリング調査などを通じて質的情報の収集,整理,分析を行い,研究内容を深めていく.
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