研究課題/領域番号 |
15K03424
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
安藤 研一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40232095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済政策 / 経済事情 / 欧州経済統合 / 多国籍企業 / 移民労働者 / 生産要素移動 / Brexit |
研究実績の概要 |
本研究では,EUにおける市場・通貨統合にもかかわらず,加盟各国の雇用・失業状況に大きな差異があることに着目し,そうした状況と多国籍企業の関係を分析することを主要な課題としている.多国籍企業は,より有利な立地場所を求めて容易にその活動拠点を動かしうるからであり,時に環境・労働法制の弱体化,所謂「底辺への競争」を強いるものと批判されているからである. 平成29年度には,前年度までに整備した研究基盤,即ち,既存研究のサーベイによる研究課題の明確化,それに対応したデータベースの整備を進め,更に,ベルギー・ブリュッセルにおいてEU諸機関へのヒアリング調査を行った.これらに基づき,多国籍企業によるリストラ事案の分析を進めた.本研究では,多国籍企業のリストラが単純に不採算部門の切り捨て,撤退するだけでなく,新規成長部門への進出と表裏一体のケースが見られることを明らかにした. 上記のような研究の進展を学会報告という形で発表した.平成29年4月にはイギリスで多国籍企業の撤退について,同年10月には東京でEU市場統合とEU域内生産要素移動のあいだの相互関係について,学会報告を行った.どちらの学会報告でも,好意的な評価・コメントを受ける事が出来た. 合わせて,平成28年度までに学会報告などを行った成果を編著本の1章,並びに,Working Paper(査読付き)の形で公表した. 更に,本研究者の研究成果に着目した内外の研究機関から,報告,並びに,コメント・討論者として招聘を受け,参加者との活発な議論を行った.これらの経験は,本助成金最終年度である平成30年度の研究にも好影響を与えるものとなるであろう.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究3年目として,学会報告を積極的に行い,国内外の研究機関からの招聘を受け,内外の研究者と議論する機会をえた.そのような場では,概ね好意的な評価を受ける事が出来た. 2年目までの研究を踏まえた成果について,編著本の1章,並びに,欧州の学会のWorking Paper(査読付き)という形で,公表することが出来た. 更に,EU諸機関におけるヒアリング調査でも文献や新聞報道などでは得られない貴重な知見を得る事が出来た.そのような知見は,本助成最終年度である平成30年度の研究や成果発表に大きく寄与するものと期待できる. 研究3年目として予定していたことは,ほぼ実施することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,本助成研究の最終年度にあたる.そこで,内外の学術研究誌への投稿を準備すると同時に,更なる研究の深化を進める.より具体的には,EUにおける多国籍企業のリストラ事例を単に国際ビジネスの問題としてだけでなく,企業の社会的責任,CSRの観点からも再評価する.このような方向性で研究を進めることにより,本助成研究を一定のまとまりのあるものとする事が出来る. 同時に,本研究を通じて明らかとなってきた新たな研究課題を整理していく.より具体的には,欧州でのヒアリング調査の際に,資本移動と労働力移動が相互に密接に関連する事例,Posted Workerという問題が,EUにおいて重要な課題となってきていることを知りえた.しかし,このような問題はより広い視野からの分析が必要である.将来的な方向性を提示できるようにしたい.
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