研究課題/領域番号 |
15K03425
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安達 貴教 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (50515153)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 産業組織 / 価格転嫁 / 起業 / 性差 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、研究代表者の主要な研究課題の一つである企業による価格戦略を対象とし、理論的及び実証的な観点からの分析の進展を図ることを目標としている。平成28年度においてはまず、共著論文"Gender Differences in Entrepreneurship and Intrapreneurship: An Empirical Analysis"を完成、しかるべき審査の過程を経て、企業経済学分野において国際的に認知されている査読制学術雑誌に掲載が決定したことが挙げられる。同論文は、当初予定していたデータの入手が困難であることが判明したことに鑑み、それと関係する「性差」に関わる実証研究として取り纏めたものである。より具体的には、起業を独立起業と社内起業とに分類し、それぞれにおいて、どういった要因が性差に関係しているかを分析し、家庭変数よりも労働変数の方がより重要といったような結果を報告している。なお、同時に、価格戦略により関係する性差の問題に関する分析として、共著論文"Gender Differences in Extended Warranty Purchases: The Case of Electronic Products"も取り纏めた。これは、アメリカ合衆国における電気製品の延長保証の購入における性差に関する実証分析であり、電気製品の種類によって、性差が異なるなどといった結果を得ており、現在、英文国際学術雑誌の査読審査中にある。また、価格戦略に関する理論的研究として、共著論文"Multi-Dimensional Pass-Through, Incidence, and the Welfare Burden of Taxation in Oligopoly"を取り纏め、研究代表者を含む共著者の所属する機関から、ディスカッション・ペーパーとして、その中間結果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記「研究実績の概要」で述べたように、まず、本研究に基づく共著論文"Gender Differences in Entrepreneurship and Intrapreneurship: An Empirical Analysis"が既に子国際学術雑誌に発表されたことが挙げられる。周知のように、経済学分野の国際学術雑誌においては一般的に査読過程は長期に亘り、従って、掲載決定のスムーズさ自体は幾つかの幸運も重なるイヴェントに過ぎないため、過度に強調することは厳に慎まなければならないが、同時に、研究期間半ばにおいて一定の成果を見たことは、当初の企図を超えたものと言える。なお、同論文は最終的に2017年3月号における巻頭論文として掲載され、また研究代表者が所属する機関からプレスリリースがなされるなど、いわゆるアウトリーチ活動にも結びついたことも特筆される点である。以上の実証的研究に加え、上述の通り、価格戦略に関わる理論的な分析に関しても一定以上の進展が見られ、平成28年度中にディスカッション・ペーパーという形式で中間的報告を行うことが出来た点も挙げられ、また、この理論的分析と関係する実証的な研究も進行中である。以上の諸点から、本研究課題は「当初の計画以上に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
以上、「現在までの進捗状況」を踏まえ、平成29年度においては、価格戦略とその厚生的含意に関して、当初の研究計画に従い、理論的な視点、及び実証的な観点の双方からの分析を継続する予定である。より具体的には、前者に関しては、幾つかの学会やセミナーでの報告が予定されており、聴衆とのインタラクションを通じ、その内容のブラッシュアップを図り、改稿作業を継続することによって、平成29年度中の取り纏め、及び査読制国際学術雑誌への投稿を行う予定である。なおこの内容は、「寡占的第三種価格差別」を含む広範囲のトピックスが射程に入る基礎的なものとなっており、研究代表者が長らく取り組んできた価格戦略に関する研究を、本研究課題終了後もより深化させる方向での進展に継続することが期待される。この点に関しては、現在進行中の実証的な分析に関する研究内容にも同様である。現在、小売レヴェルの販売データと、それを補完する産業データとに基づき、産業における事業再編と小売価格との関係に関しての分析を行っているが、これは経済理論に基づいて実証的な知見を得ることを狙いとしており、理論にフォーカスする上記研究内容とは補完的な関係にある。平成29年度においては、これら理論的洞察と実証的知見とを相互に密接に関わらせるという形式で一層の進展を図り、研究期間最終年度としての取り纏めを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書一冊が、納入元の手違いにより、年度を跨いで発注をキャンセルする必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該図書については、改めて、平成29年度に発注・納品の予定である。
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