本研究課題は、研究代表者が長年取り組んできた研究テーマの一つである価格戦略に関して理論的・実証的観点からの深化を図るべく実施された。実証的な部分に関わる点に関しては、申請当初に予定したデータの入手が予想以上に困難であることが判明したが、購買行動における「性差」という問題意識を発展させ、入手可能であることが判明したデータを利用することによって、性差と起業に関しての研究としてまとめられ、企業経済学研究において国際的に知られる査読制雑誌に掲載された(平成29年3月)。 この研究においては、起業活動における男女差の表われ方は、起業活動を行っている個人の家庭に関わる属性よりも、その個人の労働環境に関わる属性との関係からより強く影響を受けるという結果が得られている。このことから、職場環境における性差の解消によりフォーカスすることが、起業における男女格差縮小には効果的であることが示唆される。この結果はアメリカ合衆国のデータに基づくものであるが、同様のことが日本や諸外国でも成り立っているかどうかは、今後に残された課題である。なお、当該研究結果は、研究代表者の所属する大学のウェブページのトップ項目の一つである「研究教育成果情報」においても報告された(平成29年3月)。また、性差と購買行動に関わる研究に関しても論文としてとりまとめ、現在、査読制国際学術雑誌において審査中である。 理論的な部分に関わる点に関しては、価格転嫁問題の多次元への一般化に関する研究、及び需要関数を特定のクラスに限定せずに一般的なものを考えた上で、第三種価格差別の厚生的帰結を特徴付ける研究を行った。これらの研究では、需要の価格弾力性など幾つかの代表的指標と厚生評価の特徴付けとの関係が明らかにされ、研究代表者の所属する大学の附属研究センターからのディスカッション・ペーパーとして結果が報告された(平成29年3月、8月)。
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