研究課題/領域番号 |
15K03426
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
徳丸 宜穂 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00387656)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イノベーション政策 / イノベーションの公共調達 / 北ヨーロッパ / 福祉国家 / ガバナンス / イノベーションシステム / 人材の流動性 |
研究実績の概要 |
(1) 「イノベーションの公共調達」政策(以下「PPI政策」)において,調達主である政府機関と,財・サービスの供給者である民間企業を媒介する「媒介的組織」(intermediary organizations)の調査を行った.調査した媒介的組織は,中央政府機関,非営利組織,民間企業と,セクターを跨っている.調査で明らかになったことは,媒介的組織は,単に調達主と供給者の間の情報交換を促進するのみではなく,彼らの意思決定を方向付けたり,積極的にリスクをとらせたりするという,より能動的な関与を行っているということである.したがって,これら諸組織は「触媒的組織」(catalyzing organizations)と呼ぶのがより的確である.触媒作用を可能にする一つの要件は,キー人材のセクター間移動であると考えられる.そこで,上記組織における人材移動の実態を,LinkedInから作成した独自データベースに基づいて分析し,セクター間人材移動の盛んさを実証した.以上を北ヨーロッパ学会全国大会で報告した. (2) PPI政策の先進的事例として,タンペレ市の都市計画,およびデイケアセンターの予備調査を行った.両者とも「アライアンスモデル」という組織形態がポイントであること,また後者では,福祉サービス提供の質を落とさずにコスト削減を図るために,民間企業に「丸投げ」せずに質を担保する仕組みが重要であるとわかった.総じて,イノベーションに社会的価値を反映させるためのガバナンスの仕組みが枢要であると考えられる.この点は,福祉国家の理念が緊縮財政の下でどこまで維持できるかという枢要な論点に密接に関係する.来年度以降に一層の深掘りを行う. (3) 2017年度以降に計画しているアンケート調査について,Statistics Finlandの担当官との打合せを継続して行い,実査計画の具体化を進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はほぼ当初の計画通り調査研究を遂行できている.ただし新しい知見が得られたため,アンケート調査の計画にはより入念な再検討が必要だと判明したので,「当初の計画以上」の進展とは言えない.
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は,次の調査研究を行う. (1) 今年度行ったタンペレ市の聞き取り調査を本格的に行う.緊縮財政の下で福祉国家を維持しうるような社会イノベーションが生み出されうるのか,またそれはどのようなガバナンスの下で生み出されうるのか,という大きな問いを意識した調査とするように心がける. (2) PPI政策にかんして予定しているアンケート調査の調査票を,2017年中に完成させる.今年度までの聞き取り調査で得られた知見は,調査計画と質問内容を当初の予定から変更する必要性を強く示唆する.アンケート調査の質を担保し,成功させるために,今年度は調査計画を練り直し,調査票の作成を入念に行うことにもっぱら注力する.そのため,Statistics Finlandによる実査が2018年度にずれ込む可能性が大きい.なお,以上の作業は,2017年8月から12月までのAalto大学滞在期間中に,同大学の研究者およびStatistics Finlandの担当官と入念な討論を行いながら実施する.
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備考 |
当該ページの「研究紹介」「ブログ」で,成果の一部と関連成果を一般市民に公開する.
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