研究課題/領域番号 |
15K03428
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菊谷 達弥 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80183789)
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研究分担者 |
齋藤 隆志 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (60437283)
稲田 光朗 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (90750456)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生産性 / 企業グループ / グローバル化 / 組織内取引 / 組織構造 / 構造調整 / 雇用調整 |
研究実績の概要 |
当研究の申請書で書いたように、企業内および企業グループ内での資源配分を広範なデータで分析した研究は多くないが、いっそうの探索を行ったところ、申請書執筆時点では存在しなかった、あるいは我々の直接的研究トピックではないために把握していなかった、いくつかの論文を発見したので、それらの検討を行った。まず、いわゆるmisallocationの文脈で、複数事業所企業を理論的に明示的に取り扱った論文(例えば、Xi(2015)mimeo)の手法の検討を行った。次に、経済地理学の分野において、実証的に単数事業所企業と複数事業所企業を分けて分析している論文があり(例えばHenderson(2003)Journal of Urban Economics)、それらのサーベイを行った。 また、グローバル化要因が企業グループの資源再配分に与える影響を考慮したモデルを検討しているが、そのグローバル化要因の有力な一つとして、中国における貿易の成長が考えられる。中国の貿易成長の外生的変動をとらえようとした試みではAutur,Dorn,and Hanson(2013)American Economic Reviewが有名であるが、最近、その応用や拡張が増えているので、それらの分析を行い、知識をアップデートした。特に、Pierce and Schott(forthcoming)American Economic Reviewは新しいアプローチを採用したうえで、既存の中国の政策なども多くコントロール変数として取り入れており、我々のモデルを考える際の参考とした。 以上のように実証分析のための推計モデルを検討することと並行して、我々の実証研究にとって重要なデータを得ることができる、企業活動基本調査、海外事業活動基本調査、工業統計表などの政府統計の個票データを用いるため、それらの目的外利用の利用申請を行いつつある。また、前者二つは企業単位の統計であり、工業統計表は事業所単位の統計であるので、それらを接続する方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が計画している実証分析に用いる推計モデルについては、幅広い文献サーベイによる検討を行い、着実な成果を得た。政府統計の目的外利用申請については27年度中に完了することはできなかったが、引き続き手続きを継続している。また、最も重要でかつ困難が予想される、非上場会社も含めた親企業とその子企業のデータの接続、および、親企業と事業所とのデータの接続について、その方法の検討を行なった。後者の、親会社と子会社のデータの接続については、これを行って分析している既存文献で用いられた接続プログラムを入手する努力を行い、それをさらに改良して使用することを計画している。入手できなかった場合は、自前でそれを開発する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、政府統計の個票データを入手する。これらのうち、企業活動基本調査と海外事業活動基本調査の個票データをもとに、親企業と子企業のデータの接続を行い、親子グループ・データベースを完成させる。同時に、企業活動基本調査と工業統計表の個票データをもとに、親会社と事業所のデータの接続を行い、これらを統合したデータベースを完成させる。そしてこれらのデータベースを用いて、企業活動のグローバル化に伴う企業内資源配分と生産性、および構造調整のあり方に関する実証分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外研究者の手島健介氏の来日は当初3回の予定だったが2回になったこと、および、そのうちの1回の海外往復旅費は彼の都合により別の予算から支出したため本予算からの支出額が減ったことが大きな理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、共同研究遂行のための手島健介氏の来日予定は2回としていた。最低でもこの回数を実行するとともに、さらに可能な限り増やすよう努力する。また、政府統計と補完的な民間の企業固票データを購入することも検討する。
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