研究課題/領域番号 |
15K03428
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菊谷 達弥 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (80183789)
|
研究分担者 |
齋藤 隆志 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (60437283)
稲田 光朗 宮崎公立大学, 人文学部, 助教 (90750456)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 企業グループ / グローバル化 / 生産性 / 組織内取引 / 組織構造 / 構造調整 / 雇用調整 / 分社化 |
研究実績の概要 |
現代の企業を、個々の企業単体で捉える場合と、資本関係を有する企業の集合という企業グループとして捉える場合の違いを分析するために、個々の企業グループについて、資本関係の構造のパターン(二層構造、三層構造、両者を同時に含む多層構造など)を確定する作業を継続して行った。また、これらの構造が通時的に変化する場合、その構造変化がどのような理由によるものか(純粋持ち株会社への移行、M&Aによる子会社の獲得、あるいは自身の子会社化など)について、レコフ社のM&A出版資料やネット上の企業情報などを用い、調べる作業を継続した。 次に、なぜ企業組織が存在するのかというコースの命題の発展型として、なぜ企業単体ではなく企業グループが存在するのかという問題を分析するために、コースが提起した、財の取引費用の節約という観点から、企業グループ内取引の大きさについて算出する作業を継続して行った。 単体企業およびグループ企業の事業の多角化度および分社化度と、雇用調整の速度との関係については、これまで大よそ次のような結論が得られている。すなわち、多角化の進展は雇用調整速度を遅くし、分社化は親会社の雇用調整速度を早める傾向がある。これは親会社の雇用調整に際して、親会社の事業間で人員の再配置を行うと同時に、親子間でも再配置が促されるという見方と整合的である。また、海外直接投資と雇用調整速度との関係については、これまでのところ有意な関係はみられていない。ただし、これらの分析については統計分析の手法について、より洗練された方法で行う必要がある。 また、企業におけるワークライフ・バランスWLBや労使関係のあり方は労働者のモチベーションに影響を与え、ひいては企業の生産性に影響すると考えられる。こうした観点から、WLBおよび労使関係が雇用のあり方に与える種々のプラスの効果について分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単体企業およびグループ企業の事業の多角化度および分社化度と、雇用調整の速度との関係の分析などについては分析が進んでいる。より詳細な、企業の所有構造の確定とその変化の内容の調査について継続的に行っているが、作業が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
企業グループ構造の精緻な構築(二層、三層、変形多層など)を完成させ、組織構造とグループ生産性の関係を分析する。また、組織構造と組織内取引との関係について分析し、企業がなぜ存在するかに関するR.H.コースの命題の妥当性について新たな知見を得ることを目標とする。組織構造と雇用調整・設備調整との関係、および海外直接投資と雇用調整・設備投資との関係について、これまでの分析をより精緻化する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)申請した研究費の多くの部分は、海外共同研究者の手島健介氏が来日して共同研究を行うための費用に当てることを予定したものである。この回数が予定より少なくなり、かつ、彼の都合により来日費用を彼自身の研究費から支出することを優先したために、研究費の使用額が予定より少なくなった。 (使用計画)海外共同研究者の手島健介氏の来日回数をできるだけ多くし、かつ1回当たりの滞在期間を長くして、共同研究の延べ時間を拡大するように努める。また、企業グループの構造変化に関わるM&Aに関してはレコフ社が発行するデータ、企業間の取引データについては東京商工リサーチ社のデータなどを購入すること等も検討する。
|