最終年度の研究計画は、後発国の財・工程ごとのキャッチアップ過程を検証し、地域経済統合のもとでの動学的な産業構造高度化の可能性を考察する分析を、ASEAN後発国の対象を拡大しながら進めつつ、また同時に、拡大EUの後発国についても同様に分析を適用して、ASEAN後発国を対象とした分析結果との比較を行い、地域経済統合のもとでの後発国のキャッチアップの可能性について論じることである。 まず、平成28年度までに実施したカンボジアの主要産業(衣服縫製業、電気機械産業、輸送機器産業)を対象とした地域の生産ネットワークへの参加が、輸出企業の生産性に及ぼす変化に関する実証分析を、11部門の製造業部門へ拡大した分析を行った。さらに、ラオスを対象国として追加して、輸出企業データを用いて、地域およびグローバルな生産ネットワークへの参加が、企業の動態や生産性に与える影響の分析を実施した。すべてのケースに共通する結果として、生産ネットワークへの後方・前方参加によって輸出企業数の拡大と輸出成長が促進されることが分かった。これらの研究成果は国内の学術雑誌で平成30年度中(7月予定)に出版されることが決まっている。また、ASEAN後発国の主要輸出品目の一つである農産物・食品製造部門を対象として、ASEAN経済共同体のもとでの域内貿易促進円滑化措置が、各国内の同部門の生産性に与える影響と、それを阻害する要因についての部門別貿易・生産データを用いた実証研究を行い論文にまとめたうえで、ベトナム・ホーチミン市で行われたベトナム経営経済学会で研究発表を行った。 一方、ASEAN後発国と拡大EUの後発加盟国のキャッチアップ過程に関する比較分析について、前年度までに分析および学会報告を行った研究を2本の論文にまとめ、平成30年度中に国際経済・開発経済学に関する専門誌に投稿する予定である。
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