大学の効率性分析のためにデータベースの構築を行う必要があったが、前年度からこの点の作業が遅れてしまっていた。最終年度は、日本の国公立大学については全大学に関して、法人化に移行した平成16年度以降のデータを収集し、私立大学については大学四季報に掲載されている代表的な100大学に、地域別及び規模別の大学分布を考慮した200大学をあわせて必要なデータを収集した。データソースは基本的に各大学のWEB上に公開されている財務諸表の損益計算書と貸借対照表等である。これらを元に投入・算出及び費用に関するパネルデータを作成し、日本の大学における生産性と効率性を、設置者、所属学部等の類型別に計測することを試みた。さらに、大学の生産活動の非効率性を許容した上で、規模の経済性と範囲の経済性等の産業組織論的な特性を確認した。費用関数の推計に関しては、生産と費用の双対性によりインプット距離関数の推計を行った。一般的に、大学の費用・要素価格のうち、資本コスト/資本サービス価格は信頼できるデータが利用可能ではない。これは大学が非営利法人であるため、私企業のように資本市場の機会費用で測ることが望ましくないためである。よって上記のようなインプット距離関数の推計で置き換える方法をとった。この方法は2013年に発行した自著の中で日本の私立大学分析で試行的に用いたことがあるが、今回はそれをより頑健なものにするための検証を追加で行い、資本コスト/資本サービス価格に関する利用可能性の問題をクリアした。
|