最終年度に実施した研究成果については、3点ある。1点目は非線形ニューケインジアンモデルを使い、「ゼロ金利下での金融政策ルールの政策効果と自然利子率の推定を16年度に引き続き行った点である。これにより、ゼロ金利下で日本の金融政策はフォワードガイダンスに基づいていることを検証した。また、自然利子率は2008年のリーマンショック以降は負の値であったが2013以降は正の値に回復していることが示された。2点目はこれも2016年に引き続き、中規模のニューケインジアンモデルにR&D型内生的経済成長を取り込んだモデルを開発することで、GDPや消費、投資などのマクロ経済系列をトレンド成分と景気循環成分に分解した。DSGEモデルから推定したトレンドは、HPフィルタやバンドパスフィルタによるトレンドより大きく変動する。特にリーマンショック時では実質GDPは景気変動だけでなく経済成長成分も負の値になったことを示せた。3点目は、2種類のマクロ・ファイナンスモデルと3種類のデータを使ったモデル結合から日本の金利の期間構造データを予測とその評価を行った点である。これからゼロ金利以前は通常の3因子(レベル・スロープ・曲率)による予測の精度は高いが、ゼロ金利以降はGDPやインフレ率などのマクロ経済因子を採用したほうが予測精度が高くなることが実証された。 研究期間全体を通じた研究成果は、4点ある。1点目はDSGEのモデル結合方法の開発と実証である。開発はDSGE-VARモデルに、複数のDSGEモデルを事前分布する手法を開発した。実証は日本のバブル崩壊時に焦点を当て、BGGタイプの金融摩擦モデル導入有と無の2つのDSGEモデルのモデル結合から、毎期の各モデルウエイトを計測し、BGGの金融摩擦モデルが金融危機時に有効に機能するか検証を行った。2点目以降は上記に記した点である。
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