研究課題/領域番号 |
15K03442
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
板倉 健 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90405217)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CGE / FTA / EPA / 貿易自由化 / 応用一般均衡分析 |
研究実績の概要 |
世界中で多くの FTA/EPA が締結されてきた。我が国でも、環太平洋経済連携協定 (TPP) や東アジア地域包括的経済連携 (RCEP) 等の EPA に向けた議論が進んでいる。EPA の経済効果に関する CGE (Computable General Equilibrium) モデル分析が数多く行われてきたが、貿易自由化効果に加えて投資自由化効果を同時に一般均衡の枠組みで分析した研究は少ない。本研究の目的は、貿易・投資自由化の経済効果を同時に分析可能とするグローバルCGEモデルを開発し、EPA を対象とした政策シミュレーションを実施することである。モデル開発上の特色は、生産性に関する企業の異質性を導入することで、EPA による貿易と投資への効果を同時に分析する枠組みを実用化する点にある。 CGE モデルに FDI を導入する場合、ベースとなる理論モデルとして考慮すべき現時点で有力なモでルは、Melitz モデル (Melitz (2003)) を拡張したものであると考えられる。我々も数年前より実用化に向けた作業を開始したが、上記のモデルでさえも本格的に実用化されているとは言いがたい状況である。研究開発の端緒として、Melitz モデルを CGE モデルに導入し実用化することだけでも学界への貢献が期待できること、また複雑な構造をモデルに導入する際の適切な作業手順を踏むことになると考え、この導入作業を進めてきた。 これまでの成果として、小型プロトタイプ CGE モデルを「GAMS」及び「GEMPACK」という二つの開発言語で構築し、地域と部門を極度に集計した GTAP データベースを応用してモデルの挙動を検討し、国内外の研究者との議論を通じて開発上の課題解決への手がかりを得たことが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Melitz モデルを拡張した小規模なプロトタイプ CGE モデルを「GAMS」及び「GEMPACK」という二つの開発言語で構築した。Melitz タイプの生産・販売システムを考慮したグローバル CGE モデルに変更を加えるべき部分を特定化する作業を「GAMS」で行った。この作業結果を元に既存の GTAP タイプの CGE モデルに組み込むモジュールとしての設計方針を立てた。設計方針に従い、追加モジュールのコーディング・動作確認・運用実験など一連の作業を継続している。仮想データによる小規模なモデルとしてプログラミングし、言語は数値計算ソフトウェア「GAMS」と「GEMPACK」を利用している。 モデルの性質を明らかにするため、いくつかのシミュレーション実験を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
大規模モデル構築の際に必要となるデータを特定化する。具体的には、仮想データとして準備した情報を GTAP データベースと比較することで不足分を抽出する。一次データとして入手できない場合には、入手可能なデータを加工することで代替できないか、また、特定の仮定のもとでカリブレーション法などを応用することによって導出できないか検討する。準備したデータ全体の整合性が取れるよう、データ調整およびパラメータの推計作業を行う。これは、所有情報の明確な資本ストックおよび FDI 関連データの GTAP データベースへの組み込みを意味する。追加モジュールのコーディング完了後、動作確認や運用実験など一連の作業を行う。各作業ステップの移行時には、セミナーや学会での報告、国際機関や研究機関でのワークショップなどを通じて他の専門家との意見交換を行い、得られた助言などをモデル開発に反映させる。 本研究を基課題とする国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)を幸いにも得ることができた。GTAPモデル・データベース開発研究の中心である、米国Purdue大学国際貿易分析センターでの共同研究を通じて、本研究をさらに推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定のデータベース・リリースが平成28年度となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にリリースとなった、Multiple Academic もしくは Library Academic Licenseでの、Dynamic GTAP Database 第9版を入手する。
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