研究課題/領域番号 |
15K03442
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
板倉 健 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90405217)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CGEモデル / FTA / TPP / heterogeneous firms / GTAP |
研究実績の概要 |
21世紀初頭から世界で数多くの自由貿易地域や経済連携協定が締結されてきたが、2016年の米国大統領選挙以降、保護貿易主義への政策転換があった。米国の環太平洋経済連携協定 (TPP)からの撤退表明があったものの、2017年11月のベトナム・ダナンでの合意を経て、2018年3月にはチリ・サンティアゴで米国抜きの11カ国がCPTPP協定(TPP11)に署名した。協定の経済効果分析のためCGE(Computable General Equilibrium) モデルが利用されてきたが、貿易自由化効果に加えて投資自由化効果を同時に一般均衡の枠組みで分析した研究は少ない。本研究の目的は、貿易・投資自由化の経済効果を同時に分析可能とするグローバルCGEモデルを開発し、EPAを対象とした政策シミュレーションを実施することである。モデル開発上の特色は、生産性に関する企業の異質性を導入すること、そしてEPA による貿易と投資への効果を同時に分析する枠組みを実用化する点にある。 これまでの成果として、次の点を挙げることができる。(1)投資動学を組み込んだGTAPモデルを利用して、2011-2035年の政策シナリオを構築し、TPP11、RCEP、AECの経済効果の分析を実施した。分析に於いては海外直接投資受け入れと2国間投資協定との実証モデルから得られた推計値を応用し、投資環境整備の効果を組み込んだ。(2)世界中で利用されている標準的なCGEモデルであるGTAPモデルを拡張して、Armington-Krugman-Melitzを整合的に包含するフレキシブルな国際貿易モジュールを組み込んだ。(3) 拡張したモデル応用による研究成果を国際学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)による海外派遣先の米国パデュー大学国際貿易分析センターから2017年7月に帰国した。帰国直後に発生した両親の看病・看護のため、補助事業期間延長を申請し、承認された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は、主として、拡張したCGEモデルの挙動を詳しく検証するため、応用テストを実施することである。応用テストでは、TPP11、RCEPなどの具体的な政策シナリオを利用することや、グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)に対応したエージェント別輸入需要モジュールの働きも検討する。国際学会での研究成果報告や、国際共同研究加速基金での派遣先である米国パデュー大学国際貿易分析センターとの共同研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年7月以降において高齢な両親の看病と介護のため当初計画が遅延し、補助事業期間延長が承認された。 平成30年度は当初の研究目的を達成するため研究を進める。
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