1. 長期的な企業関係がある場合の企業立地と市場構造 非貿易財産業で企業が長期にわたり供給を行うような状況において、市場規模が異なる2地域への立地と市場構造に関する分析を行った。寡占のもと、企業が市場規模の異なる地域への立地を決定し、各地域で競争、暗黙の共謀のどちらが実現するか、市場規模格差の拡大がその結果にどのような影響を及ぼすかを検討した。企業の持つ割引率がある一定の水準を上回れば共謀が維持されること、市場規模が小さいほど共謀が維持されやすく、市場規模が大きい地域では競争、小さい地域では共謀が起こるような状況が均衡となりうることが分かった。また、市場規模格差の拡大により、そのような結果が起こりやすくなることが明らかとなった。本研究成果は国際学会で報告され、現在海外査読誌への投稿に向け論文を改訂中である。
2. 垂直的産業における企業立地と経済厚生 中間財・最終財が生産される垂直的産業のもとで、両財市場が寡占である場合に、両産業の自由参入企業数が経済厚生の観点から望ましいかについて検討した。分析の結果、中間財・最終財市場における企業数の差を決める市場間の費用格差の水準および需要関数の曲率により、参入企業数が過剰・過少のどちらにもなりうることが明らかになった。本研究成果は国内学会で報告され、現在海外査読誌への投稿へ向け論文を改訂中である。 また、派生的研究として、垂直的産業における2国への企業立地と経済厚生について分析を行った。最終財の生産を行う企業が外国に存在し、中間財の生産を行う費用が異なる2企業が立地を選ぶ状況のもとで、企業は立地に関わる固定費用が高ければ自国に、低ければ外国に立地し、中間の場合、費用が低い企業だけでなく費用が高い企業が海外進出を行う可能性が示された。また、このような立地のもとでの経済厚生および政策的含意について検討した。本研究成果は国内学術雑誌に掲載された。
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