研究課題/領域番号 |
15K03452
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
加藤 篤史 青山学院大学, 経営学部, 教授 (00286923)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 暴力紛争 / 経済成果 |
研究実績の概要 |
本研究では、自発的な交換によらない暴力や詐取などによる価値移転が経済成果に与える効果の分析を行っている。 本年度は、第一に当該テーマを分析するための分析枠組みの精緻化を進めた。E. Ostromの制度分析の枠組み(IAD Framework)に依拠しながら、Dahrendorfらの紛争の社会学の成果も取り入れ、また社会運動論の研究にも目を配りながら、理論枠組みの再検討を行った。そのような作業の結果、フォーマルな政治活動と暴動、テロ、内戦などは連続的な政治的な働きかけの選択肢としてとらえられるという視点に至った。すなわち、暴力の行使は、人間にとって決して特別な手段ではなく、フォーマルな政治的な手続きと同列な手段にすぎず、特定の条件のもとで政治的な行為主体はあらゆる手段の選択肢の中から最適な手段を選択するという考え方を取るべきであろうと考えられる。 第二に暴力紛争が経済パフォーマンスに与える効果の実証研究を一層精緻化することに努めた。国内外の学会やインフォーマルな研究会で数回発表を行い、他の研究者から様々なフィードバックを得ることができた。それらのコメントをもとに実証研究の方法について改良を行っている。 今後は暴力紛争が経済パフォーマンスに与える影響がどのような経路を通して働くのかについて、より詳細な変数を作成して検証を行っていきたい。また、計量分析をする上での問題点を克服するために、別のデータセットを作成し、異なるデータからも検証を行って、これまでの推計結果の頑健性の検証も行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は数回の研究成果の発表で他の研究者から有益なコメントを得て、それらのコメントを踏まえて、理論的枠組みを一度根本から考え直す作業を行った。このため、経済学だけでなく、政治学、社会学などの関連文献を広く読むことに時間を費やした。その結果、より有益な理論枠組みを得ることができた。また、研究発表を経て、現在の研究成果の問題点などを確認することができ、今後の研究の方向性を見定めることができた。実証研究の新たなデータセットや推計モデルについても目途を付けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新しい理論的な分析枠組みのもとで、より広い視座から本研究テーマをとらえていきたい。実証研究では、単に非自発的な価値移転が与える効果を事後的に検証するだけでなく、非自発的な価値移転が発生する経済的・政治的・社会的な原因を踏まえながら、その効果について考察して、インドの州レベルのデータを用いながら、より厳密な実証研究を実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していなかった大学内業務によって遅れた分が本年度開始の新しいプロジェクトの進捗に影響を与えたために、次年度への繰り越し分が発生してしまった。すなわち、本年度は、前年度が本来の最終年度であった前科研費プロジェクトの繰り越し分が発生したため、研究費が予定外に多くなってしまった。そして、その繰り越し分は、前科研費プロジェクトの研究費の受取期間中に大学内の役職に就いたために、研究が遅れて発生したものであった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度から移籍した早稲田大学ではクォーター制を取っているなど現地調査を実施するための研究環境が大幅に改善したため、今年度は現地調査を複数回実施して、インドでの情報収集を精力的に行っていく予定である。また、新たなデータベースを購入することも検討中である。
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備考 |
佐藤隆広教授(神戸大学)との共同論文が以上のサイトからダウンロードできる。
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