研究課題/領域番号 |
15K03452
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加藤 篤史 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (00286923)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 暴力 / 価値移転 / 経済発展 / 集合行為 |
研究実績の概要 |
本研究では、人々の間で価値の移転が起きる際の様式の違いによって人々が価値創造的な行為を選択するインセンティブが異なり、経済全体のパフォーマンスに影響が現れることを明らかにすることを目的としている。昨年度は政治学や政治経済史の分野での既存研究を渉猟し、暴力・詐取・競争が人々の経済的行為に与える効果についての理論的・実証的研究がどこまで明らかにしているかを詳細に確認し、自らの研究のための理論モデルの構築に努めた。 これまでの研究で得られた暫定的な理論モデルに基づけば、以下のようなことが言える。人間は自らの期待価値を最大化するように行為を選択する。多くの場合に人間は集団を形成して期待価値を増大を図る。集団はしばしば暴力の行使・脅威によって、他の集団の成員から価値を奪おうとする。過去のほとんど全ての人間はこのような価値移転の様式が顕著な権威主義的な政治システムの下で生きてきた。そのような社会では、人々は価値創造的な行為を選択するインセンティブが低いため、経済は低迷する傾向を持つ。 一方、生産技術の進歩に伴って産業構造の変化・都市化・中間層の増大などの社会変動が生じ、軍事技術の進展に伴って政治エリートが資本家階級からの税収に大きく依存せざるを得なくなった結果、徐々にエリート間での権力の分布が変化した。また、産業エリートと農業エリートの対立の中で、徐々に政策の決定に参画できる市民の層も拡大し民主主義的な政治システムが採用されるようになる。 一般に、政治リーダーは政治的サバイバルのために、勝利連合の望む政策を採用する傾向がある。経済発展に関わる諸政策についても、各政策に利害を持つ集団が政権を担う政治リーダーの勝利連合を構成するかどうか、その政治リーダーが中長期に政権を担うかどうかが、その政策の選択と実施に影響を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の出版には至っていないが、研究のための理論の精緻化は大いに実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得ることができた理論モデルを、本年度はインドのデータを用いて実証研究する。本年度は複数の論文を完成させ、学術雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度4月に早稲田大学に移籍し、新しい講義科目を複数担当したために、授業準備と新しい環境の下での学生指導に多くの時間を割かざるをえず、また昨年度半ばより研究科の執行部メンバーに加わることになって時間的拘束が増えたため、予定していた回数のインド出張を実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、理論モデルの実証を行うために、インドでの現地調査を3回以上行う予定である。また、実証研究に必要なデータの追加購入が必要であるため、そのための出費を実施する。
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