研究課題/領域番号 |
15K03454
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
竹田 陽介 上智大学, 経済学部, 教授 (20266068)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 長期停滞 / マイナス金利政策 / 自然言語処理 / 労働分配率 |
研究実績の概要 |
大きく分けて,長期停滞に関する三つのテーマについて分析を行った. 1. 長期停滞の下での金融財政政策に関して,欧州の各国及び日本の中央銀行が採用しているマイナス金利政策について理論的に分析した.金融緩和策として中央銀行が購入する国債の金利がマイナスの水準に誘導される一方,信用リスクを除いて国債と代替的であるはずの銀行預金及び貸出の金利は,法的規制の影響等からマイナスの水準には達していない.この状態について,差別価格の理論を貨幣需要に適用したNick Wallaceの法的規制理論に基づき分析した. 法的規制理論において,中央銀行の採り得る操作手段は,超過準備に係るマイナス金利の深堀か,購入する国債の増額の二つがある.前者によると,国債金利のマイナス幅を広げられるが,社会厚生を低下させる.一方,後者の場合,社会厚生は不変のまま,国債需要を喚起するために国債金利が跳ね上がる. 2. 日本銀行が2013年4月以降発動してきた量的・質的金融緩和政策に焦点を当て,黒田東彦日銀総裁の定例記者会見での発言に対して,Latent Semantic Analysis(LSA)という自然言語処理を施した.解析の結果,2016年2月に始まったマイナス金利政策の導入以降,それまで見られていた政策スタンスの一貫性は大きく低下し,コミュニケーション戦略が不調に終わっていることが判った. 3. 世界的な長期停滞の背景として考えられる労働分配率の低下傾向について,一般不均衡モデルを用いて分析している.世界的な労働分配率の低下傾向の原因として,先行研究は第一に,投資財価格の下落傾向,第二に,産業を通じて顕在化しつつある「スーパースター企業」による市場独占を挙げる.本研究は別の要因として,非自発的失業から自発的失業への失業の質の変化を取り上げ,実質賃金の低下,所得格差を生むメカニズムを明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期停滞のメカニズムに関する理論モデルの構築が遅れている.一方,マイナス金利政策に関する理論モデルが出来上がり,国債市場のデータを用いた実証分析を行うことが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
第一に,長期停滞のメカニズムに関する理論モデルの構築を早急に進める. 第二に,マイナス金利政策の法的規制理論について,国債市場のデータを用いて実証分析する. 第三に,労働分配率の低下について,理論モデル及び実証研究をさらに進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の学会・コンファレンス等への参加を,海外の治安への不安等から躊躇ったため,旅費が過少となった.
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次年度使用額の使用計画 |
設備備品の購入や修理のための支出を計画している.
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