研究課題/領域番号 |
15K03458
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮田 幸子 立命館大学, 経営学部, 准教授 (10646764)
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研究分担者 |
秋田 隆裕 立教大学, 経営学部, 特任教授 (50175791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | returns to education / policy evaluation / labor outcome / SUSENAS data / 教育の収益率 / 教育政策の政策評価 / 労働市場成果 / 家計調査データ |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度に分析した都市化及び教育拡充下にあったインドネシアにおける個人の教育や労働市場の成果について、教育政策による影響を含めて研究を継続した。教育拡充下におけるインドネシアの賃金構造と教育の収益率について、社会経済家計調査データ(SUSENAS)を用いた実証分析を行った。昨年度行った教育の収益率の分析結果を踏まえ、インドネシアで追加的に得た情報をもとに、分析の精緻化を行った。具体的には、第一に、操作変数モデルの操作変数(IV)についての検討と分析を行った。他のIV候補について、先行研究をさらにレビューした。データにおけるIVの候補が限られる中、インドネシア他の家計調査のデータベースによる分析等も参考にし、このデータで分析可能かを検討した。第二に、インドネシアにおける教育政策の影響を分析する観点を追加した。1970年代に行われた学年暦変更の教育政策による個人への教育と労働市場における成果について分析を行った。実施年に在学中であった学生は、学年暦の変更により、就学年数が変更された。これは予告なく突然実施され、ある種の社会実験的な状況であった。この状況を生かし、政策実施による個人の教育達成度、後の労働市場成果(賃金)等への影響などを分析した。分析の結果、学年暦変更の政策(総就学年数の延長)は、個人の教育成果に影響を及ぼすが、労働市場成果には顕著な影響を及ぼすことは確認されなかった。 世帯間消費支出格差の研究については、昨年度執筆したADBIワーキングペーパーを若干編集し、本出版に向けて編集者に提出した。さらに、加筆修正を行った論文を学術雑誌に投稿した後、コメントを受け取り、全てのコメントに対応し、同年度中に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度より継続し、教育の実証研究について、社会経済家計調査データ(SUSENAS)を用いて、教育の収益率の論文の修正、及び新たに教育政策の影響の分析を行った。当初計画していたように、これらの成果をいくつかの学会やセミナーで公表した。具体的には、これらの研究成果は、8月14-15日にジャカルタ開催された国際学会、第2回インドネシア経済開発学会、8月21-22日にクアラルンプールで開催された国際応用経済政策学会、8月23日にノッティンガム大学ビジネススクール(マレーシアキャンパス)研究セミナー、などで発表した。 また、長期にわたる消費支出格差の推移に関する研究については、当初の計画に従って、28年度に引き続き全国社会経済家計調査データを用いてインドネシアにおける家計間消費支出格差の推移を空間的な観点から分析した。この研究成果は、国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。学術雑誌に投稿し、コメントを受け、全てのコメント・質問に対応し、年度中に受理された。 さらに、インドネシアにおいて以前から継続していたSaguling家計調査を用いた関連研究について分析を追加し、現地に紹介された事業に参加した場合、長期的に経済状況(所得、貧困等)が改善された可能性を示唆する結果を得た。この成果を12月16-17日に東京で開催された国際会議Hayami Conferenceにて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
教育政策の影響についての分析については、再考すべき点や改善の余地があるため、次の課題として検討を継続する予定である。新たに別の家計調査データベースを用いるという方向性もあり得るが、これまでの一連の変数作成や分析を分析し直すことになり、多大な時間を要する可能性があるため、慎重に検討する。原則として、これまで使用してきたSusenasデータにおいてできる検討項目を優先して進めていく予定である。 また、インドネシアの教育の収益率の分析については、操作変数法におけるより適したIVについて候補となり得る変数を新たにリストアップした。その候補の中で、Susenasデータや、他のデータベースから作成可能な変数を選出し、今後分析の精緻化を行う。分析結果をまとめ、学会やセミナーにおいて公表し、論文としてまとめる予定である。 以上の研究トピックがこれまでの大部分を占めることとなったため、当初計画していたフィリピンの事例については、データ収集などを今後に持ち越すことで調整した。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、本研究の申請当初想定していなかった所属機関の変更及び移動があり、業務内容の大幅な変更が生じた。研究環境、学内事務手続きシステム等も大幅に変更となり、研究室環境も一から整えることとなった。その間、昨年中に別の科研の研究が始まったこと、関連研究がこの時期に進んだこと、さらにこれらの研究計画における研究協力者らの予定変更などから、三つ以上の研究スケジュールの調整を要した。以上から、複数の観点で計画や時期を見直し、修正・変更することが重なったため。 次年度は、内外のセミナー・学会発表や、分析結果に関する解釈について現地の政策立案者や研究者の見解との整合性の確認するため、出張を計画している。同時に、データ分析の研究補助や国際誌への論文投稿の際の支出を計画している。
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