研究課題/領域番号 |
15K03464
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
伊ヶ崎 大理 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (10336068)
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研究分担者 |
松尾 美紀 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (50437282)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 少子化 / 出生率 / 地域間の人口移 / 子育て支援政策 / 持続可能な成長 / 社会保障 / 動学モデル |
研究実績の概要 |
本年度は、研究開始2年目であったため、前年度の研究を踏まえ、モデルの拡張を行った。第1に、高齢化が都市化に及ぼす影響をモデル化した。日本をはじめとする多くの先進国では、少子高齢化が進んでいる。賦課方式の社会保障制度を前提とすると、高齢化の進展は、現役世代の負担を増加させるため、若年層が子どもを持つインセンティブにも影響を与える可能性が強い。このことを考慮に入れた理論モデルを構築した。第2に、政治的なロビイング活動が地域の所得や地域間の人口移動に及ぼす影響をモデル化した。少子化社会は、地方都市の過疎化や地域経済の衰退を促す傾向にある。そのため、地方都市においては、政治的な活動を通じた所得再分配政策への要望が強くなるかもしれない。しかしながら、そのようなロビイング活動により、地方都市において生産性の低い産業を保護することにつながるのであれば、生産性の高い高所得者が都市部に移動するインセンティブが増してしまうことが示唆された。第3に、地域間の出生率の相違を検討した前年度のモデルを拡張し、地方自治体が行う子育て支援政策が人々の居住地選択に対してどのような影響を与えるのか、地域間の人口分布や出生率をどのように変化させるのかを検討したモデルを構築した。これは前年度のモデルの拡張し、より精緻な理論を構築することを試みた。こららの論文は、European Regional Science Associationの国際学会、九州経済学会、case2016等の学会やワークショップで研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マクロ動学モデルに社会保障制度や家族制度などを導入し分析を行う予定であった。前者については、高齢化を考慮したモデルを、後者については、子育て支援政策を導入したモデルを構築した。作成した論文は、European Regional Science Associationの国際学会、九州経済学会、case2016等の学会やワークショップで研究報告を行い、学術誌に投稿中(もしくは近日中に投降予定)である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまでに執筆し学会報告などを行ってきた論文を着実に学会誌に掲載していくことを考える。さらに、地域ごとの人口移動を考えたモデルをさらに拡張し、以下のような点を明らかにする。(1)地域ごとの出生率の相違や地域間の人口移動が長期的な人口水準や経済活動に対してどのように影響を与えるのかを検討したうえで、地方経済の再生策を考える。(2)人口減少社会において、出生率を回復させることが社会保障や経済の持続可能性を考える上では重要である。そこで、出生率を上昇させるような子育て支援政策(例えば保育所の設立、児童手当、教育支援など)において、何にプライオリティを置くべきなのかを検討する。(3)人口減少社会においては少子高齢化が進む傾向がある。そこで、どのような政策(子育て支援、高齢者のみならず若年層をも考慮に入れた社会保障など)を重視するべきなのかを議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
諸般の事情により、参加予定であった国際学会への参加を取りやめた。また、代表者と分担者で研究の打ち合わせをする予定であったが、大学の個人研究費を別途充当できたこともあり、次年度への繰り越しをすることが、研究を行う上で合理的になるという判断のもと、繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会への参加、論文の投稿料、共同研究の研究打ち合わせ等に使用する予定である。
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