現代の民主主義は、17世紀のイギリス清教徒革命、18世紀のフランス革命やアメリカの独立革命などを経て、歴史的に発展してきた。その間、戦争などの特殊要因を除き、各国の人口は概ね順調に増加してきた。また、20世紀に人類は「人口爆発」と呼ばれる人類史上最大の人口増加を経験した。このような時代では、全有権者に占める若い世代の割合は高いため、各個人が利己的かつその行動がライフサイクル仮説に従う場合であっても、政治的意思決定の時間的視野は長かったと考えられる。その際、時間的視野の長さ(=「全有権者に占める若い世代の割合が高い」との前提)は、異時点間の効率的な資源配分に重要な役割を担う。しかし、21世紀の現在、多くの先進国は急速な少子高齢化に直面しており、この前提が徐々に揺らぎ始めている。 その結果、少子高齢化の進展に伴う社会保障費の膨張や恒常化する財政赤字により日本の公的債務残高(対GDP)は急増し、社会保障費の削減や増税を含め様々な改革が提案されているが、財政改革や世代間格差の是正は容易に進捗しない。この背後には、多数派の高齢者層などに配慮した政策を政治が優先的に選択するという「シルバー民主主義仮説」が関係している可能性もある。このような状況の中、世代間問題を巡る解決の糸口として、「年齢別選挙区」「ドメイン投票方式」や「余命投票方式」等の新しい選挙制度の導入を求める提言も出てきている。このため、本研究は、「シルバー民主主義仮説」の検証を含め、こうした新しい選挙制度の導入が、各世代の意思決定を通じて、財政等に及ぼす影響を分析し、今後の政策立案に有益な情報を提供することを目的とすることにあった。 令和元年度においては、研究結果の一部を盛り込み『日本経済の再構築』(単著、日本経済新聞出版社)や『孤立する都市、つながる街』(共著、日本経済新聞出版社)を執筆し、出版を行った。
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