研究課題/領域番号 |
15K03468
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
平田 英明 法政大学, 経営学部, 教授 (60409349)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際経済学 |
研究実績の概要 |
初年度は以下のような研究実績であった。 1.先行研究のサーベイ:景気の連動性問題はリーマン・ショック以前のいわゆる「大いなる安定」の時期に、多くの新しい手法を用いた分析が登場した。その後、世界金融危機の伝染(contagion)に関する研究が徐々に蓄積されている。特に、近年は先進国以上に新興国に関する研究が蓄積されつつある。これらの先行研究をサーベイし、理論モデルや実証モデル構築の基礎とした。更に、景気連動性に限らず、金融市場の連動性に関する研究や地域内国際貿易に関する実証分析にも目を向けた。 また、本稿が注目する産業レベルの分析が米国と欧州で少しずつ出てきたこともあり、それに関するサーベイも実施した。さらに、産業政策との関連で、財政分野とのつながりにも注目し、サーベイを進めているところである。 2.パネルデータセットの整理と記述統計量の計測:データセットは、欠損値なども多く、丁寧にデータ処理をする必要があった。各国別かつ時系列の金融商品別および財別の国対国の取引額データのため、データ数が膨大となっている。まずはデータの整備を進めたが、データが随時更新され、過去のデータが事後的に取り消されたりするなどしていることもあり、整備に手こずっている。 3.計量分析手法の検討:波及経路に関連する変数間では内生性が生じている可能性が高く、これを考慮したパネル計量分析を用いる必要があり、企業金融分野の応用計量経済分析の手法などを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ整備に時間を要しているため。一部のデータはオンラインのみで公表されるデータのため、随時データの更新が行われる。それ自体は問題ないが、以前はデータが公表されていたのに、急に公表されなくなると言った問題が生じており、データセットの構築が難航せざるを得ない状況となっている。 1つの論文が概ね完成しており、新年度前半には海外査読雑誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
データの整備にはしばらく時間がかかるが、データなくして分析は進められないので、丁寧に作業を進める予定。 各国間の景気連動性が高まるかを産業レベルのデータを用いて実証的に検証するということは、国際貿易や国際金融の構造の変化を理解することと表裏の関係にある。例えば、国際貿易が拡大しても、その中身次第で伝播のインパクトは異なる。IT(情報技術)ショックが発生したとする。産業「間」貿易が拡大している場合、A国がたとえITショックに直面しても、B国では他産業に特化していていれば影響を受けにくく、連動しにくい。一方、IT産業「内」貿易が拡大していれば、連動性が高まる。また、国際金融取引の拡大も、連動性を高めるとは限らない。取引の拡大を通じ、必要な資金を融通しやすくなることから、各国間の景気は同じ方向に動き、連動性は高まると考えられる。しかし、資本移動の自由度が高まれば、競争力のある産業に資金がより一層集まり、各国が生産の特化をしていく。その特化の仕方次第で、波及の影響も異なる。実証研究でどこまで、これらの理論的な分析に対して素直にアプローチしていけるかが鍵であると考えて、考えを整理しているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のようなデータの問題があることから、データ整備に関し、RAに任せておくと、データ処理で不適切な対応をしてしまいかねないため、RAへの作業の依頼を保留にしていること等。
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次年度使用額の使用計画 |
データの問題についての全容がわかり次第、RAに作業を委託する予定。
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