研究課題/領域番号 |
15K03469
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
松川 勇 武蔵大学, 経済学部, 教授 (50287851)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 省エネルギー / 社会規範 / 非価格介入政策 |
研究実績の概要 |
本年度は2013年に京都府の京田辺市・木津川市・精華町で行われた「けいはんな大規模電力デマンドレスポンス実証」のフィールド実験データを用いて,家計を対象とした省エネルギー政策の評価を行った。具体的には,非価格介入政策として住宅エネルギー・レポート(Home Energy Report, HER)を取り上げ,家計の電力需要に及ぼす影響を明らかにした。HERの実験では,担当者が直接被験者宅を訪問してリーフレットをもとに節電方法を指導した。その際,前年の電力消費量に応じて被験者を「多い」「平均的」「省エネ」の3段階に区分した他者比較を提示することによって,節電の社会規範に関する情報が家計の省エネルギー行動に及ぼす影響を分析した。また,実験ではピーク時間帯の電力消費量に応じて価格を数種類設定し,適用される価格水準を1日前に被験者へ通知することによって,価格インセンティブによる節電効果についても検証を行った。 パネル分析の手法を適用して実験データを解析した結果,HERの節電効果が確認されたのはオール電化契約を結ぶ家計のみであった。オール電化契約の場合,HERの需要抑制効果は家族揃って活動する可能性の高い朝と夜の時間帯に比較的多くみられ,効果が3か月にわたって持続したケースもみられた。HERの効果がオール電化契約の被験者に限定されたことから,省エネルギーの非価格介入政策において対象を限定した適用(targeting)が重要であることがわかる。これに対して,価格インセンティブによる節電効果はピーク時間帯に限定されるものの,幅広い対象に適用することによって多大な節電効果が得られる可能性があり,省エネルギーの価格介入政策にはピーク需要の抑制に伴う経済効果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度及び28年度において当初計画された研究内容はすべて実施され、興味深い成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度の平成29年度において、リアルタイムの電力情報の提供が家計の電力消費に及ぼす影響を分析する。具体的には、昨年度と同様に「けいはんな大規模電力デマンドレスポンス実証」のフィールド実験データを用いて,情報の獲得と電力消費の決定に関するモデルを推定し、情報提供による節電効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
業務の都合で予定していた出張を行うことができず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に延期した出張の費用として使用する計画である。
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