京都府京田辺市・木津川市・精華町において2012年度から2年間にわたって実施された緊急ピーク時料金および住宅エネルギー・レポートに関する実験データを用いて、家計を対象としたデマンド・レスポンスの節電効果の計測を行った。実験では,被験者を統制群と実験群にランダムに振り分け、夏季と冬季のピーク時間帯の電力消費に応じてポイント式のインセンティブを実験群の被験者に供与することによってピーク需要の抑制を促した。また、住宅エネルギー・レポートの実験では、担当者が直接被験者宅を訪問してリーフレットをもとに節電方法を指導した。その際、前年の電力消費量に応じて被験者を「多い」「平均的」「省エネ」の3段階に区分した他者比較を提示することによって、節電の社会規範に関する情報が家計の省エネルギー行動に及ぼす影響を分析した。 実験群と統制群のパネルデータを用いて分析した結果、節電効果は夏季・冬季ともに統計的に有意であり、デマンド・レスポンスの需要抑制効果の確実性が示された。住宅エネルギー・レポートの節電効果が確認されたのは、オール電化契約を結ぶ家計のみであった。緊急ピーク時料金および住宅エネルギー・レポートを想定し、フィールド実験から得られたデータをもとに構築した家計の電力消費の経済モデルを用いて、プログラムの節電効果に関するシミュレーション分析を行った。その結果、緊急ピーク時料金と電力情報の提供は、2013年夏季において約15%の節電効果をもたらす点が示された。政府が家計に呼び掛けて自発的に節電を促した場合(5%程度)に比べ、緊急ピーク時料金と電力情報の提供を組み合わせることによって多大な節電効果が期待できる。また、住宅エネルギー・レポートの提供は、2013年6月において5~8%程度の節電効果を有する点が明らかになった。
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