研究課題/領域番号 |
15K03475
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松本 保美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00201781)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報通信技術(ICT) / デジタル・デバイド(DD) / デジタル・デバイド・インデックス(DDI) / インターネット |
研究実績の概要 |
情報通信技術(ICT)を利用可能か否かによって生じる個人間の経済的・社会的格差をデジタル・デバイド(DD)と言う。このDD問題は、90年代後半に注目され、今世紀初頭より関連研究が急増している。DDによる個人間格差は、一国内においても多国間においても、広がりつつあり、貧富の格差の主たる要因になっている。DDによる貧富の格差を測定し、解消するには、基準となる指標、デジタル・デバイド・インデックス(DDI)が必要である。本研究は、世界各国に共通なDDIを構築し、ICTに起因する国際間の貧富の格差の計測を試みることである。経済政策的には、一国内におけるDDによる経済的格差の計測の方が重要とも思われるが、発展途上国を中心に必要な統計データが収集できないため、国家間の格差は計測しない。DDIを作ることが重要であるという認識は世界共通になりつつあり、EUでの研究が一歩先んじているが、世界的に見た現状は、実際にDDIを作るまでには至っていない。その大きな理由は、90年代以降、急激にインターネットが普及し、ICT関連の技術革新もめまぐるしいため、経済システム、個人生活など、社会が一変してしまい、ICTの社会的影響をどこまで考慮したらよいか、判断が難しくなっているためと推測される。本研究の初年度の目標は、スペインの研究者と共同で、DDIのプロトタイプを構築することであったが、ICTの影響が社会の隅々にまで行き渡っているために、DDI構築のための情報範囲の決定で調整に手間取ったが、現在、最終段階にある。今年度の研究で判明したことは、通信インフラの整備方法の違いにより、また、国際機関、NGO、先進国の協力などにより、先進国と発展途上国でDDIの構成を変える必要があるという点である。プロトタイプを含めたDDI構築のための基本的考え方は、今夏、リュブリアナでの国際会議で発表する運びとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.DDI構築のために必要な統計データの絞り込みに時間がかかった。それは、ICTやインターネットが社会の隅々にまで浸透したため、どこまでをDDIに取り込むかが難しかったからである。 2.先進国と発展途上国では、通信インフラの構築法が大きく異なり、それが、DDに大きな違いをもたらしていることが判明した。 3.発展途上国のDD解消には、国際機関、NGO、先進国などが様々な援助を行っており、DDIも先進国用、発展途上国用に分ける必要性があることを認識した。 4.DDIはDDの現状を数値で計測するものなので、DDIの中身が異なっても現状の把握、比較は可能との結論に達した。また、先進国から発展途上国への支援を厚生やwell-beingの立場から見ると、世界全体の厚生レベルを上げる行為とみなせるので、厚生経済学、経済政策の面から、評価可能な指標を新たに構築することにも意義があると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在、スペインの共同研究者との間で、プロトタイプのDDIで取り込むデータ、その加工方法の討議に入っている。それから、基本DDIの設計に入るが、これは今年9月以降になるだろう。この段階では、発展途上国用DDIの設計も必要になり、新たな情報収集を要する。主たる情報は、国際通信連合(ITU)に頼ることになりそうだが、ICT分野の援助で積極的な英国やフィンランドの民間企業に対するヒアリングが必要になる可能性もある。これは、スペインの共同研究者と協議しながら進めていくことになる。先進国向けのDDI構築に関しては、大きな問題は生じないだろうと思われる。研究計画全体としては、基本的な方針転換はないが、半年程度の遅れが予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費(PC)が、当初予定していたものより良いものが安く購入できたことにより、未使用残額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算は、研究計画と基本的に変わらないと思うが、発展途上国用DDIに関し、新たな使用(文献、ヒアリングなど)が必要になるので、総使用額は、当初予定よりも若干増えるものと予想している。 主な内訳としては、外国旅費(38.8万円:B&ESIでの発表、Ljubljana, Slovenia)、国内旅費(9.9万円:The 15th International Conference of the Japan Economic Policy Association, Hokkaido University of Education, Hakodate, October 29 - 30, 2016での発表)、謝金(5万円)、文献購入(10万円)、プリンタ・インクカートリッジ、コピー用紙など(3万円)などである。
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