研究課題/領域番号 |
15K03476
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤澤 美恵子 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (10502320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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研究実績の概要 |
本研究は、「でんき家計簿」を使用している消費者を対象に、エネルギーの見える化の効果を計測するものである。でんき家計簿は、東京電力(株)が無料で契約者にWeb上で提供しているサービスであり、この登録をおこなうと自宅で使用した電力の使用量を確認することができる。でんき家計簿で確認できる内容は、単に電力の使用量ばかりでなく、近隣の住居や家族構成が似通った家庭の電気使用量(よく似たご家族のエネルギー使用量)を比較したり、省エネアドバイスを確認することができる。このような、電力使用量の見える化が消費者にどのような影響を与えたのかを計測するためにインターネットアンケートを実施した。 インターネットアンケートを選択した理由は、でんき家計簿に登録している登録者を比較的容易に抽出できる点にある。また、でんき家計簿に登録していない対象者のデータも同時に収集し、見える化の効果が電力の最大使用のピークシフトにどの程度影響が出るかを、情報の有無による違いも含めて検証することが可能であるからである。その結果、アンケート調査の対象者は、「でんき家計簿に登録し情報を与えられたトリートメント群」「でんき家計簿に登録し情報を与えられなかったコントロール群」「でんき家計簿に未登録で情報を与えられたトリートメント群」「でんき家計簿に未登録で情報を与えられなかったコントロール群」の4グループに分類して、それぞれの違いについて詳細の分析をおこなうことが可能となった。 なお、アンケート調査に加え、電気使用量の見える化ソフト開発の先駆けであるアメリカのOpower社のヒアリング調査をおこなった。アメリカの先行事例や現在日本の電力会社と提携して各地域で実施している社会実験の結果を入手して整理した。これらの先行事例の知見は、アンケート分析にあたり考察や政策提言の参考とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画では、①アンケートのモニター抽出、②インターネットアンケートの実施、③Opower社の先行事例を調査する予定であった。これら3点については、すべて実施をおこない、以下のような成果を得ている。 ①と②については、3月の下旬にインターネットアンケート調査を実施することで完了している。インターネットアンケート調査によるメリットを活かし、モニターの選出を指定して4グループに分類し、約1,000サンプルを入手することができた。現在は、データクリーニングをおこない、分析をすすめているところである。 分析結果から、省エネ感度の高い人に見える化の効果の関連性がある傾向や情報量による省エネ行動の変化を観察できており、今後はこれらをまとめて学会発表や投稿論文として開示していく予定である。 ③については、Opower社が関係している電力使用量の見える化の地域の洗い出し、また実験的にトライアルで取り組んでいるプロジェクトのエリアや内容について、詳細にヒアリング調査をおこなった。その結果、省エネ行動変容の特性や工夫の仕方について有益な情報を得た。 本研究は、おおむね順調に進展しているが、平成27年10月に大学を移籍したこともあり、研究時間の配分が想定以上に圧縮された。そのような中で、データの整理・分析が若干遅れていると認識している。しかし、大幅な遅れではないことから、今後、第2回目のインターネットアンケート調査やヒアリング調査の実施段階で、遅れを調整できるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、3月に行ったインターネットアンケートデータを詳細に分析した結果をベースに、以下の計画を実施する。 平成28年度は、第2回インターネットアンケートの調査票を設計する。これを第1回分とあわせて分析する予定である。また、Opower社の事例調査やOpower社の社会実験エリアの実地調査をおこない、分析結果に反映させ、省エネ制度に関する考察や政策インプリケーションの参考とする予定である。同時に、でんき家計簿以外での省エネマークや環境マークに関しても調査をし、消費者に省エネ行動を促す手法や制度設計に関する考察を多面的におこなう予定である。 平成29年度には、第3回目のインターネットアンケートをおこない、その変化について継続性の視点をもって分析する。これらの分析をとおして、省エネ行動への変容の誘発要因や継続性の要因を明らかにしていく。 なお、具体的なアンケートの設問において、継続性を確認するために、でんき家計簿登録者には見える化での効果を計測するために電力料金や料金の変化について尋ねる。さらに、日常的な省エネ行動や省エネマーク等の認知度差から、省エネの見える化に対する行動が変化するかを検証する。同時に、ピークシフトなど社会全体の省エネ行動の合意形成が可能かについても検証する。これらのデータと属性との関係を明らかにし、情報量の介入により、人の省エネ行動が変化するか、どのように反応するかを分析できる調査となるように工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたインターネットアンケートをオムニバス形式で実施しており、当初想定していた調査費用を軽減することができた。そのため、平成27年度分の未使用分が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額部分は、おおかた本年度に予定しているインターネットアンケート調査の費用に加算して使用する予定である。当初の費用より余裕が見込めるため、この部分を消費者のインタビュー調査などの詳細な調査費用として使用する予定である。
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