研究課題/領域番号 |
15K03482
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
厳 善平 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (00248056)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国 / 戸籍制度改革 / 農民工 / 都市化 / 少子高齢化 / 新常態 |
研究実績の概要 |
中国政府は持続的な経済成長を目指し様々な制度改革を推進している。農村から都市への出稼ぎ労働者(農民工)の都市定住を促すべく戸籍制度改革はそのうちの重要な一つといえる。戸籍の転出入に対する厳しい制限、都市部で働く農民工の医療・年金など社会保障制度への加入規制、さらに農民工の子弟が学校教育を受ける権利への抑圧を取り払って、農民工の継続的就業を可能にし、労働力の有効利用、ひいては経済成長に対する労働制約の緩和が図られている。本研究の目的はこうした制度改革の実施状況および改革の効果、問題点などを現地調査からの一次資料で明らかにすることである。2015年度に、下記のような研究活動を行なった。 ①上海社会科学院人口都市発展研究所等の協力を得て上海市における流動人口の就業と生活について現地調査を実施し、流動人口に関する既存の文献資料や個票データの収集を行った。 ②世界中国学論壇(上海)に出席し、"The Labor Force Participation Rate and Its Determinants in Rural and Urban China:An Empirical Research Based on CHIPS 1988-2010"をタイトルとする研究発表を行った。 ③国内外の専門家を招き、同志社大学でワークショップを開催した。関係学会から多くの会員が参加する中で、中国における人口移動、都市化、戸籍制度改革などに関する幅広い議論が行われた。 ④流動人口の就業、市民化などに関して既存データの統計解析を行っており、その成果を学会などで報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国・上海市の関係機関、専門家を対象とするヒアリンク調査を実施し、文献や統計資料の収集を順調に行なっているが、アンケート調査の単価が高騰していること、海外資金によるアンケート調査が実施困難となっていることが理由で、当初の調査計画の一部を見直すことにならざるを得ない。具体的には、農民工および上海市の戸籍住民を対象に就業と暮らしに関するアンケート調査(それぞれ1500人)を計画した。2003年、2009年に同じような調査は所属機関からの資金援助もあって実施できたが、ここ数年間で、調査委託費が2、3倍上がっていることに加え、海外からの委託調査に関わる申請・審査が厳格化されている。そのため、当初の調査計画を大幅に修正する必要が出てきた。幸いに、中国政府の関係機関で農民工など流動人口を対象とする全国調査が定期的に行われ、その中に本研究の目的で利用できる情報も豊富にある。社会科学院など関係機関の共同研究者と協議しデータの共同利用ができるように交渉している。
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今後の研究の推進方策 |
中国では、CGSS(Chinese General Social Survey)、CHIP(Chinese Household Income Project Survey)が代表するような全国調査の個票データは一般の研究者も利用可能となっている。「全国流動人口衛生計生調査」(毎年、全国各地から20万人超が抽出・調査される)も共同研究の形で利用可能となっている。今後、予算制約の中で、既存データを最大限活用すると同時に、それを補完する小規模のアンケート調査を実施する。現地でのヒアリング調査にも力を入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート実施を2016年度に変更したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度実施を目指して関係機関と調整中である。
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