研究課題/領域番号 |
15K03488
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
菅田 一 関西大学, 経済学部, 教授 (90330167)
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研究分担者 |
石井 光 関西大学, 経済学部, 准教授 (00405630)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際寡占 / 貿易と投資 / 費用格差 / 海外市場参入形態の内生化 |
研究実績の概要 |
寡占企業の外国市場への参入形態や技術革新投資の選択を分析するために、平成27年度は市場規模および企業数に関して対称的な2国を想定した基本モデルを構築した。しかし、2国とも国内には効率的な企業と非効率な企業がそれぞれ1社存在するという費用格差を導入した。従来の国際寡占モデルと同様、第1段階では外国市場への参入形態を選択し、第2段階において自国および外国市場でクールノー数量競争を行う2段階ゲームを仮定した。外国市場に輸出で参入する場合は f の固定費用がかかるが、直接投資で参入する場合は f+g の固定費用がかかる。しかし、従来のモデルと異なり、効率的企業は外国市場に(i)輸出により参入するのか、(ii)直接投資により参入するのか選択できるのに対し、非効率な企業は外国市場に(iii)輸出により参入する、あるいは(iv)まったく参入しないのいずれかを選択する。分析結果は以下のとおりである。f と g の大きさに応じて部分ゲーム完全均衡では、第1段階の参入形態の選択において、(a)効率的企業および非効率的がともに輸出、(b)効率的企業が直接投資、非効率的が輸出、(c)効率的企業が直接投資、非効率的が輸出しない、(d)効率的企業が輸出、非効率的が輸出しないを選択する4つのレジームが存在することが明らかになった。また、外国政府が課す関税率が十分に低い場合に f と g の固定費用が中程度の範囲にあるとき、レジーム(a)かレジーム(c)の複数均衡となることも証明された。逆に、その関税率が十分に大きい場合f と g の固定費用が中程度の範囲にあるとき、均衡が存在しないことも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、2国間の市場規模および企業数が非対称なケースで分析を行っていたが、あまりにも一般化し過ぎたために、場合分けが必要以上に多くなってしまった。次に、市場規模と企業数を2国間で対称にして、各国の企業数も最低限必要な2社に限定して分析を試みたが、その2社間の費用格差が依然、分析を複雑なものとしてしまった。また、研究代表者の健康状態が悪化したことも研究の遅れを生じさせてしまった。現在は、先述の単純化されたモデルで部分ゲーム完全均衡を導出できたので、厚生分析がやっと始まった段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は市場規模と企業数を2国間で対称にし、各国の企業数も最低限必要な2社に限定することで単純化されたモデルにおける厚生分析を試みる。複数均衡が生じている場合については、均衡間で厚生比較を行うことで、政府による投資政策の重要性を指摘し、具体的な政策の考案を行う。また、その分析が複雑になる場合は数値解析を行うことにする。以上で、論文執筆の見通しが立ったと言える。そして、研究代表者の健康の回復により、海外への渡航が可能となり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の Winston Chang 教授から直接、分析手法についての助言を受けることで、一層研究を推進させることもできる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が予想以上に複雑な計算を要するものとなり、進捗状況が悪化した。これを受けて論文の執筆が滞り、海外の学会での研究発表の実現には至らなかった。これが当初予定していた旅費の当該年度内執行につながらず、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
海外の学会への参加および報告を行ったり、海外の研究者を訪問して直接アドバイスを受けるなどし、繰り越した旅費を積極的に消化していく予定である。また、次年度においては当該度末に打開策が見つかり、論文の執筆が本格的に始まる。そして、次年度中には海外学会のカンファレンスや査読付きの海外専門雑誌に投稿を行う見通しが立つので、先行研究の整理を行うための書籍購入や、専門業者への英文校正を依頼する機会も増える。さらに海外雑誌への投稿料金の支払いなどの出費が次年度は多くなることも予想される。これらの次年度支出予定額の増加については、当該年度の次年度繰越予算と合わせて、次年度予算を有効に利用しながら対応していくつもりである。
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