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本研究は、産業集積と事業所の生産性上昇との関連性を、事業所ベースの個票データを利用して実証分析することを目的とする。事業所間の地理的な立地近接性だけでなく、産業間・製品間の技術的近接性も定量的に捉えながら、生産性の上昇に寄与する事業所群の地理的な集積（産業クラスター）が、どのような地域に分布し、どのような産業・事業所から構成されるのかを特定する。
研究初年度は、基礎的な分析として、輸送用機械関連産業の集積が見られる名古屋大都市圏を対象に、市町村レベルの産業別従業者データを利用して探索的空間データ分析を行い、地域産業の成長に寄与する産業クラスターの分布と産業構成を、地図上に可視化して特定した。
2年度目は、前年度までにパネルデータ化の作業を終えていた『工業統計調査』及び『経済センサス活動調査』の個票データを用いて、確率的フロンティア分析により、自動車・自動車車体・自動車部分品に分類される各部門の全要素生産性（TFP）の変化を、①生産フロンティアの変化（技術進歩）、②生産効率性の変化、③規模効率性の変化の3つの構成要因に分解して計測した。特に自動車部分品製造業については、大規模組立工場の地理的近接に立地する事業所に生産フロンティアの顕著な増大が計測され、組立工場を中心とした自動車産業クラスターが形成されている可能性が確認された。
さらに最終年度には、自動車部品の一次（ティア1）サプライヤが生産する自動車部品の技術特性に着目し、技術的基盤が類似し、かつ競争優位にある製品を生産するサプライヤからなる産業クラスターを特定した。技術の競争優位は、当該サプライヤが生産する製品を生産できるサプライヤがいかに限られ（遍在性の低さ）、かつその製品がどれだけ多様な自動車メーカーに供給されるか（多様性の大きさ）の程度を指標化して評価した。
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