研究課題/領域番号 |
15K03494
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
瀧井 貞行 西南学院大学, 経済学部, 教授 (60311320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際貿易 / 多国籍企業 / インドネシア / マイクロデータ |
研究実績の概要 |
昨年度の分析を発展させ,インドネシア製造業種の事業所を対象に,その輸出動向に関する実証分析を継続して行った。分析の目的は,事業所レベルの輸出と輸入との関係を解明することである。中間財輸入を助長することが途上国における輸出を促進するという考え方があるが,企業レベルにおいてこれを確かめた分析は少ない。中間財の輸入が輸出行動に影響をもたらす経路として,①コスト削減を通じた経路,②生産性向上を通じた経路,③品質・技術向上を通じた経路等が考えられる。これらの効果を分析するために,製品=事業所レベルのデータから,各事業所の輸出品目数と輸入品目数を計測し,一部の先行研究を参考にしながら,輸出品目数を左辺に,輸入品目数を右辺におき,パネル・データ分析を行った。分析の主な結果は次のようにまとめられる。第一に,輸入品目数を増やした事業所は,輸出品目数を増やす傾向にあることが示された。輸出あるいは輸入をしている企業は,他と比べてより高価な中間財を利用する傾向にあることから,コスト削減効果は小さいと考えられること,また,Wooldridge(2009)の方法で計測された生産性指標は統計的に有意でなかったことから,主に,品質・技術向上を通じた経路が働いていると考えられた。第二に,製品を主な輸出先・輸入元別に分類して分析を行った結果,主にアセアンから輸入されている中間財の輸入品目数を増やすと,主にアセアン向けの製品の輸出品目数が増えることが示された。第三に,先進国向けの輸出については,主に東アジア諸国から輸入される製品の輸入品目数と相関が強いことが示された。これらの結果は,輸出品目の多様化を図るためには,中間財輸入を助長する政策が有効であること,また,先進国向けの輸出を増やすためには,東アジア諸国からの中間財輸入が重要であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は,外資系企業からもたらされるスピルオーバー効果の検証を進める予定であったが,前年度のテーマを発展・継続して進めたため,また,データの整理に予想以上に時間がかかっているため,上記のテーマに関する分析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
データの検証作業を早急に済ませ,予定していた分析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額のうち,大部分はすでに支出済みである。データ整理作業で遅れている部分を補うために,データ整備の補助員を雇い,効率化を図りながら進めていく予定である。
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