研究課題/領域番号 |
15K03503
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
永瀬 伸子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (30277355)
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研究分担者 |
水落 正明 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50432034)
松浦 司 中央大学, 経済学部, 准教授 (50520863)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | Mate Search / Female Labor / Fertility / East Asia / Work Norm |
研究実績の概要 |
日本の少子化の要因として、企業の職場環境が男性の育児参加を阻んでいることを仮説に実証した以下論文が査読つき論文として採択された。Nagase, Nobuko and Mary Brinton(2017)“The Gender Division of Labor and the Second Birth,”Demographic Research vol.36 Article11 339-370. 国際比較研究として、2016年夏に、ドイツ、University of Duisburg-Essenに滞在、少子化のすすむドイツの母親の聞き取り調査を行った。また米国のMate Search事情についても米国研究者との交流から専門知識の供与を得た。 研究成果を以下で発表した。 1.日本人口学会、The Cause and Consequences of Childlessness in Japan:Differences by Educational Attainment 意図せざる少子化がすすんでいる。ただし大卒女性については1980-84年生まれでやや結婚が早まる傾向が見られ、半面高卒層で停滞が見られる。2.Association of Asian Studies学会 The Effect of Tax Structure on Japanese Married Women’s Economic Participation。パートの壁が有配偶女性の就業行動に非常に大きい影響を与えていることを示した。 2016年秋に、研究室の学生とともに首都圏23大学の学生約1000人に、ライフコース、年金意識、奨学金のアンケートを行い、ユース年金学会で発表。若者意識を調査した。 豪州国立大学と国際ワークショップをお茶大で開催し、奨学金負担と少子化の関連について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本の少子化の要因に、結婚希望を持ちながらも交際相手を持たない若者の存在がある。その態様は、お見合い文化を持つ東アジアの男女交際規範が影響を及ぼしてはいまいか。たとえば、親の子どもに対する交際活動についての教育や、学校教育等の環境や規範は、お見合い文化を土台とする東アジアと欧米とは異なるであろう。 2016年には米国からバーモント大学Elaine McCrate氏が来訪された際に、お茶大にも滞在してもらい、米国での配偶者選択行動について専門知識の供与を受け、日本との差異への視点を改めて得た。 また中国のYueping Song准教授をアジア学術会議関連のAASSAでワークショップを行った際に招聘し、中国の女性就業と子どもについての意見交換を行った。 しかし具体的な調査についてはまだ検討中である。申請時には、いくつかの高校で親と子のライフコース見通しの中に、交際行動への親と子の態度を含めた調査をしようと当初考えていた。しかしその後、科研分担者や協力者との会議で揉んだ結果、小規模な調査がどの程度、研究上の意義を持つのかへの疑念が提示され、1年目、2年目ともに実施を見送った。 昨年は、ゼミ大学生の協力のもと、首都圏の大学生 約1000人に、ライフコースと年金意識の調査を行った。調査が成功したため、交際行動調査も行うことを検討したが、実施には至らなかった。モニターに依頼した調査についても検討中である。WEBを通じた調査を含めて、もっとも有効なものとなるか、まだ検討中である。政府統計の2次分析を通じた研究、学会発表、査読つき論文の公刊はテンポよくすすんでいる。現在は、若者からの聞き取りを通じて、有効な設問を作成している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度より、3年目には、東アジアの女性労働と少子化についての国際会議を行う予定であった。計画に従い、6月11日の日本人口学会において、国際セッションを組み、米国ハーバード大学のBrinton教授と、カナダWinnipeg大学で中国女性労働研究を行っているDong教授の招へいの約束を得た。分担者の水落氏、永瀬とともにセッションを組み発表予定。また6月8、9日にはお茶大で事前打ち合わせとワークショップを実施する予定である。Brinton氏からは、2015年、2016年と研究協力を得ている。国際会議は順調に行えると考えている。 昨年別の資金で招聘した中国人民大学のSong准教授から、中国の新しいパネル調査について情報を得た。中国についてはこれを分析に用い、日本と比較する予定である。幸い科研費に基づき、厚生労働省『21世紀成年者縦断調査』の貸与を受けることができている。厚生労働省『社会施設等調査』のデータ貸与を2016年より申請中でありこれを遂行したい。または総務省統計局『労働力調査』も申請中である。これらを用いて、偏らないデータでの日本の結婚・出産の低迷と労働市場や若者の行動に影響する他の諸制度(たとえば奨学金など)とのかかわりを分析する。 また日本の男女の交際行動が特に低迷している理由を解明する小規模だが独自の調査票を作成し、調査実施を行いたいものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
交際行動に関するアンケートを2年度目に実施する予定であったが、若い男女へのヒアリング、政府統計の2次分析などから、可能なもっともよい調査方法と設問について、検討を続けたため。 なお大学生に対するライフコース意識、年金、奨学金に関する調査は学部ゼミとともに実施した。この際、交際行動について検討したが、さらにヒアリングを必要とすると考えた。 また政府統計の貸与に予想以上に時間がかかったため、この読み込み等の実施が翌年にまわったため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度となるが、これまでの大学生へのヒアリングや先行研究等を踏まえて、調査票を作成する。より幅広い年齢層を対象とできるWEB調査、あるいは、学生への調査、いずれかの方法を選択し実施する。 政府統計の読み込みについて、大学院後期課程の研究協力者に謝金を払う。
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