研究実績の概要 |
日本の少子化の要因には、労働市場の変化や雇用慣行の硬直性に対する視点だけでなく、東アジアの家族構造、家族規範の中での配偶者サーチの伝統とその変化への注目も必要である。本研究では、配偶者サーチ行動については①配偶者サーチにおける東アジアに共通な伝統規範の変化を『出生動向基本調査』を用いて記述的に把握した、その上で②2017年実施の独自調査の分析からサーチ仲介組織の衰退と嗜好としての交際の低下を提示した。また労働市場や雇用慣行の変化について③男性(夫)が、職場同僚の家事育児分担から影響を受けること、大企業大卒男性の家事育児分担はもっとも低く、同僚(Peer)の分担が上がることが共働き夫婦の第2子出産タイミングを早めることを『21世紀成年者縦断調査』の分析から示した(Demographic Research,2017共同論文、査読あり)、④ウーマノミクス政策は、幼い子どものいる女性の正社員就業を統計的に有意に拡大したこと、低年齢児保育供給の拡大も加えて大きい影響を与えたこと(Asian Policy Economic Review,2018 査読あり)、⑤日本の大卒女性の中位年収は『労働力調査』から分位点推計をすると国際的にみて驚くほど低いこと、いったん分布の裾に入ると脱出が難しいこと、学生支援機構の奨学金利用者が増加しその返済負担の重みが増していること(Economics of Education Review,2018採択 査読あり共同論文)、これも家族形成に負の影響を与えていることなどが明らかとなった。 最終度は現代日本の政府統計の分析の深化とともに、お茶の水女子大学COEジェンダー研究のフロンティアにおいて収集した北京、ソウルのパネル調査を再分析、東アジア比較の英語文献として取りまとめることに注力した。
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