研究課題
日本の都道府県単位で見た所得,健康,教育,安全に関する属性分布に基づき,社会厚生と地域間格差の動向を一般化ローレンツ支配基準やローレンツ支配基準を複数属性に拡張した概念を用いて考察した.対象年次として1980,1985,1990,1995,2000,2005,2010の各年次を取り上げた.社会厚生に着目した分析では,2010年の社会厚生は,1980年を除いた過去の年度と比較して他の年次よりも高い水準にあることがわかった.ただし,1990年代から2005年までの間は刑法犯認知件数を指標とした安全が社会厚生の改善にとっての隘路となっていた.実際,4つの属性のうち,安全を除いた3属性に基づき社会厚生を評価すれば2010年の属性分布は他のすべての年次の分布を支配する.また,1980年を基準年度としたとき,愛知県,大阪府,福岡県においては,社会厚生改善のためにすべての年次において安全の改善が必要であった.また,北海道,福島県,埼玉県,長野県,奈良県,広島県では2010年を除く各年次において安全の改善が必要であった.一方,相対的な格差に着目した分析では,いずれの年度をとっても複数の属性を総合して考えれば支配関係が観察されなかった.個別の属性で見ても,大学進学率を指標とする教育において1980年の分布がそれ以降の分布によって支配されることと,人口あたり民間最終消費支出でを指標とする所得について,2000年の分布が1985年と1990年の分布を支配することと2010年の分布が1990年の分布を支配することが観察されるにとどまった.このように,1980年代以降の厚生の地域間分布では所得以外の属性が重要であることが示され,地域間の財政移転や格差緩和政策にはより多面的な配慮が求められることが明らかとなった.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Working Paper, No.315, 2018.03, Faculty of Economics, University of Toyama
巻: - ページ: 1-25
10.15099/00018360