研究課題/領域番号 |
15K03508
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (10411836)
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研究分担者 |
加藤 源太 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20571277)
田村 寛 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40418760)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療経済 / レセプト / DPC / 自己負担 / 医療費 / 入院 / 外来 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,DPCやレセプトデータを用いた医療政策の評価研究を行った。今年度は,自治体の医療費助成が医療需要に与える影響を分析した。 自己負担の効果を検証することは非常に重要な課題の1つである。だが,外来サービスに対する自己負担が入院サービス利用に与える効果のようなサービス間の関係に関する検証は十分に行われていない。そこで,近年急速に対象者が拡大している市区町村による子どもの医療費の実質的無償化助成政策に着目し,外来サービスの自己負担減少が入院サービス利用に与える効果を検証した。2012年度と2013年度のDPCデータ(366,566件の入院)を,制度変更が起きる市区町村レベルに集計し,固定効果法を用いて分析を行った。さらに地域の所得水準によって結果が異なるのか否かも検証した。 分析の結果,自己負担の減少は,地域所得によって違っていることが示された。低所得地域では,自己負担引き下げは入院件数を有意に減少させており,高所得地域では,入院件数を有意に増加させていた。この結果は,低所得地域では入院と外来は代替的であり,高所得地域では補完的であることを示唆している。自己負担引き下げの助成にかかる費用は,低所得地域においては入院の減少によって部分的に相殺される可能性があるが,高所得地域ではそのような期待はできず,むしろ外来への助成は,医療費を増加させる傾向にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りで、特に問題なく順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは医療のデータのみを取り扱った研究を行ってきたが、政策が社会保障全体にどのような影響を与えるかを評価することはほとんど進んでいない。特に近年、医療と介護の連携に関して、供給政策として地域包括ケア体制の整備など様々な施策が行われているが、医療と介護の関係に関する実証的な研究は我が国ではもちろん、世界でもほとんど行われていない。 そこで、H29年度は医療と介護の連携の評価について、ある政令指定都市と協力し医療と介護のレセプトを同時に連結されたデータの構築を行う。データの構築の後、高齢者の医療の自己負担変化を用い、医療の自己負担変化が起こったときに、介護費用がどのように変化するかを検証する。 結果としては、医療の自己負担が下がることで、医療需要が増加することは先行研究と同様の結果が得られることが予想される。本研究では、医療需要の増加と同様介護需要も補完的に増加するか、医療需要の増加とは代替的に介護需要は減少するのかが明確となり、医療費自己負担変化の政策評価をより幅広い見地から評価することができる。そのほか、医療系研究者との共同研究により、健康リスクと医療費・介護費の関連などについても実証研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表の後藤は、平成28年4月に京都大学から慶應義塾大学に異動したため、研究室立ち上げ等に一定の期間が必要となった。そのため、当初予定されていた国内・国外出張等を平成29年度に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
分担研究者は京都大学に在籍中のため、研究打ち合わせに対する国内旅費が新たに必要となるため、そちらに充当する。また、今年度国際医療経済学会での報告を予定しているため、そちらの出張旅費にも充当する。
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