研究課題/領域番号 |
15K03509
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小野 哲生 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50305661)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 年金 / 公教育 / 人的資本 / 経済成長 / 国債 / 世代重複モデル / 高齢化 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,研究目的に記載した第一の研究課題である年金,国債と経済成長の研究に取り組み,2つの論文を執筆した. 第一の論文では,公教育を通じた人的資本蓄積が経済成長の源泉となる経済成長モデルを用い,政府が税収を公教育と公的年金に支出する状況を描写した.家計は若年期と老年期の2期間を生きる世代重複モデルを想定し,政府支出が確率投票を通じて決定される内生的な政策決定を想定した.この枠組みの下で,寿命の増大,人口成長率の低下による高齢化が,政府支出配分及び経済成長に与える影響を定性的,定量的に分析した.分析の結果は以下の通りである:(1) 人口成長利の低下は,若年世代の政治的ウェイトの低下を意味し,この結果,公教育支出が減少し,公的年金支出が増大する.(2) 寿命の増大は老年世代の政治的ウェイト増大を意味し,公的年金支出の増大につながる.しかし,公教育支出については非単調な効果が見られ,経済成長率についても当初は増大するものの,さらなる寿命の増大は成長率の低下につながることが判明した.この結果は,先進諸国のエビデンスとも整合的である. 第二の論文では,第一の論文で用いたモデルから年金を捨象し,一方で公教育支出の財源として,所得税に加えて国債発行を加えた.国債発行による公教育支出のファイナンスは,現在世代の税負担を削減するととともに,支出の負担を将来世代に転嫁できる.このため,厚生の観点からは国債発行がない均衡財政に比べて望ましくない結果が得られることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した,平成27年度の研究計画をおおむね実行できたため.
|
今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した平成28年度の研究計画にしたがって研究を遂行する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費については,所用のため学会出張ができなかったため,支出を行わないこととなった.また,人件費・謝金については,研究計画遂行にあたって当初予定していたRAの雇用の必要性がなくなったため,支出を行わなかった.
|
次年度使用額の使用計画 |
物品の購入と,英文校正の支払いに充当する予定である.
|