研究課題/領域番号 |
15K03510
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
恩地 一樹 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (80709858)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 法人税 |
研究実績の概要 |
1)明治期における法人なりのサブプロジェクトでは1880ー1892年の企業個票データを使い、1887年の所得税の導入が小規模企業において法人なりを促したことを明らかにした。この結果は、法人税がない税制のもとでは節税を目的の法人なりがおこってしまうことを示しており、さらに法人税と所得税が相互に依存していることを示している。本年度は査読過程のための改訂作業を共著者所属先機関(オーストラリア)と大阪大学で行ったが、完成論文が経済史の国際ジャーナルであるJournal of Economic History誌に採択された。また、結果をより一般に発信するため、研究室のホームページで概要を公表している。 2)税と買収合併行動のサブプロジェクトでは、近年最高裁で結審されたある有名な租税回避の判例に着目し、問題にされた租税回避スキームが裁判で明らかにされた以外にも起こっていたかどうか検証を進めた。我々の試算では、裁判で明らかにされた金額のおよそ9倍である1700億円の節税がスキームが採択されることにより生じていることが明らになった。本年度は内外の学術的な研究会で報告をしたが、研究成果の社会還元のため財務省財務総合研究所でも研究成果を報告した。海外の研究者との共同研究であるが、本年度も共著者所属先機関(アメリカ)を訪問し打合せを行った。 3)合併の成否にはターゲット企業の大株主の行動が重要だという視点から、大株主がもちうる純粋な投資動機以外の価値を推計する方法を検討している。本年度は途中結果を共著者と共に国際学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
経済史のサブプロジェクトの論文が経済史の国際ジャーナルで広く読まれるJournal of Economic History誌に採択された。M&Aのステップ取引に関する研究がまとまりつつあり、セミナー報告を通して改訂を進めながら29年度中には投稿できる見込みである。合併の成否にはターゲット企業の大株主の行動が重要だという視点から始めたサブプロジェクトが予想以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、税と買収合併行動のサブプロジェクトをミシガン大学のセミナーと国際学会で報告し改訂を進め、ワーキングペーパーとして公表し国際ジャーナルに投稿する。現在所有しているデータが2013年までであるが、近年の動向を捉えるためにデータを追加する。買収合併における大株主の役割についての研究では、純粋な投資動機以外の価値を推計し合併買収行動の成否との関連を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
M&Aデータを購入予定であるが、2017年3月末分のデータの公表が2017年5月になるため、次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のデータを購入する予定である。
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