研究課題/領域番号 |
15K03511
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 幸浩 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90345471)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 租税競争 / 非対称地域 / 戦略的代表選出 / 環境問題 |
研究実績の概要 |
関西公共経済学研究会およびThe 2nd Belgian-Japanese Public Finance Workshopにて論文`The Direction of Strategic Delegation and Voter Welfare in Asymmetric Tax Competition Models'(寺井公子教授との共著)を報告し、参加者より高い評価を得た。この論文では、非対称国家から成る資本税率に関する租税競争において、各国の租税政策の相互依存を利用した「戦略的委任」(strategic delegation)の性質とその経済厚生上の評価が、考察する非対称性(大国・小国の、経済特性からの特定化)に依存することが示された。また、学会The 4th Chulalongkorn University-Osaka University Joint Workshopにて、長寿化が教育インセンティブや経済成長に与える効果(Ben-Porath effect)を考察した論文`Education Choices, Longevity and Optimal Policy in a Ben-Porath Economy' (Pierre Pestieau氏、Gregory Ponthiere氏との共著)を報告し、参加者より高い評価を得た。また、寺井公子氏との共著の、環境問題に関して各国の政策の相互依存を利用した戦略的委任を取り扱った論文`Strategic Delegation When Public Inputs for a Global Good are Imperfect Substitutes'が、大幅な改訂の後、査読付き学術誌International Tax and Public Financeに受理、公刊された。また、Jean Hindriks氏との共著の、各国の資本所有(capital ownership)の比率が租税競争における内生的手番決定に与える影響を考察した論文`Equilibrium Leadership in Tax Competition Models with Capital Ownership: a Rejoinder'を改訂した。改訂稿では、主要結果がより一般的な経済環境で成立することが示され、改訂稿は査読付き学術誌International Tax and Public Financeに受理、公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度新たに進展させ、コンファレンスで報告をした諸論文においては、理論結果が、大国・小国をどのように特定化するかに依存するという論点を、戦略的代表選出やそれに伴う経済厚生の評価などの点で示すことができた。得られた結果は関連分野の研究を補完し、また、グローバル化とその反動を示す経済・政治情勢を説明しうるものである。また、今年度改訂・公刊を果たした論文については、結果の頑健性や継続課題を見つけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
資本税競争や環境政策における戦略的委任は、政策競争の前にゲームのプレイヤーが別の政策変数を動かすケースに相当し、産業組織論で企業が戦略的コミットメントをするケースにも対応している。そこで、平成28年に公刊された論文`Strategic Delegation When Public Inputs for a Global Good are Imperfect Substitutes'の継続を行い、戦略的委任が非対称均衡をもたらす要因を、既存研究と比較可能な形で明らかにする。また、戦略的委任の構造は、選挙における政策へのコミットメントと関連しているが、このことを指摘し、国際政策競争の観点で選挙における政策へのコミットメントの内生化を扱っている研究はない。今年度は、この点に関しても研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で、必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なった。しかし、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
研究活動に必要と思われるパソコン周辺機器および文房具の購入、および研究成果発表や資料収集のための、国内および海外出張、および英文論文校正などに用いる予定である。
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