今年度はこの研究テーマに関しておもに4つの論文の執筆を進めた. 第一の研究は,厚生労働省の機関であるわかものハローワークにおいて若者向け就職トレーニングの効果を検証したもので,論文「就職活動支援プログラムが求職者の意識や意欲に与える影響」としてまとめた(条件付採択).第二の研究は,同トレーニングの効果を就業以外について確認したもので,論文「就職支援プログラムと若年失業者のメンタルヘルス」としてまとめた(投稿中). これらの結果は,大阪わかものハローワークの協力の下,日本で初めてトレーニング期間中の求職者の追跡調査を実施したことで得られたものである.調査の実施には助成していただいた研究費を使用した.国の政策の効果検証を政府機関からの委託ではなく研究者からの働きかけにより実施することは珍しい.検証の結果トレーニング効果は大きいことが確認されたことに対しては,学術研究者のみならず政策担当者からの問い合わせも多く,社会的な関心の高さに答えられる結果となった. 第三の研究は“Job fairs and company attractiveness perceptions” で,シンガポールで行われた日系企業の採用面接会に参加した求職者に対して,求職意欲を調査した結果をまとめたものである.分析の結果,企業のブランド力や業績などの影響ではなく,面接会当日の会場において企業が行った説明会の在り方が,求職者の当該企業への応募意欲を変えることがわかる.この論文は査読付き学会に投稿中である. 第四の研究は,大阪府の協力の下,府下の中小企業約500社に対して行った「採用に関する調査」をまとめたものである.分析の結果,中小企業が求職者に対して自社に関する何をどれだけ開示するかで,人材の獲得状況が変わることを示した.結果は大阪府が主催する報告会等で報告を行った.
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