研究課題/領域番号 |
15K03514
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 章 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10294399)
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研究分担者 |
乃村 能成 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70274496)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 少子高齢化 / 人口減少 / 少子化対策 / 年金改革 / シルバー民主主義 / ドメイン投票方式 / 世代別選挙区制度 / 余命別選挙制度 |
研究実績の概要 |
本研究では、将来の人口動態がモデルにおいて内生的に決まるように拡張を行った「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を用いて、育児支援の促進政策が将来の人口の推移と経済厚生に与える影響の分析を行った。その結果、育児支援が大きくなるにつれて、将来の人口が累増的に増加すること、またそれと同時に、全体の経済厚生が高まることが定量的に示された。昨年度は、政策変更の時期を自由に選べるようにさらにモデルを拡張した。育児支援の促進政策の実施が遅れてしまった場合(2020・2030・2040・2050年にそれぞれ実施)の効果を比較したが、現在の日本では、子どもを産み、親になる可能性のある女性の数自体が急激に減少し続けていることを反映して、少しでも改革の実施が遅れると将来の人口が大幅に縮小してしまうことが定量的に示唆された。この結果は、日本の将来の人口の観点から、育児支援の促進政策の実施にもはや時間的猶予はなく、早急に実施しなければ、たとえ改革が実現できたとしてもその効果は限定的になってしまうことを定量的に示している。 さらに、こういった改革を行う場合に、早めに改革実施のアナウンス(告知)を行うことによる経済効果についても調べた。その結果、事前の告知なしに、突然、育児支援促進の改革を2020年(2030・2040・2050年)に実施する場合と比べて、事前に(2015年に)改革実施の告知を行う場合には、たとえ実際の改革が7年遅れても、すなわち2027年(2037・2047・2057年)に実施したとしても、それでもなお将来の人口の推移がより大きくなることが定量的に示された。この結果は、事前の告知に伴う実体経済への影響は定量的にかなり大きいことを示唆している。このように、もし政府が育児支援促進の改革を行うのであれば、改革の実施が確定した時点で速やかに、出来るだけ早く告知すべきであることが定量的に明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を構築し、育児支援政策と公的年金政策について定量的分析を行った。その結果、これらの政策は、世代間での所得移転を適切に行うことによって、パレート改善がもたらされる、経済学的に望ましい政策であることが明らかとなった。さらに、これらの政策が政治的に実現可能かどうかについても検討を行った。この論文の内容を基に一般の読者向けに書き上げた論考が、「中央公論」(2016年7月号)や日本経済新聞の「経済教室」(2017年5月5日)に掲載されるなど、この研究成果は世間から大きな注目を浴びている。さらに、政策変更の時期を自由に変更できるようにモデルを拡張し、改革の実施の遅れが将来の人口の推移および全体の経済厚生にもたらす影響を定量的に分析した。また、改革の実施についての事前のアナウンス(告知)が実体経済に与える影響についても定量的に分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を構築し、これまで育児支援の促進政策が日本の将来の人口の推移に与える影響について分析を行ってきた。今後の日本の人口問題を考える上で、同時に「移民政策」についても検討することが重要であるので、今後は、移民が日本経済にもたらす定量的な影響について分析を進めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
複雑なシミュレーション・プログラムの計算を行うため、計算速度の速いパソコンを購入する予定であった。しかしながら、昨年度において購入予定であったパソコンの計算速度は必ずしも十分ではなく、また、このようなパソコンの機能の向上は日進月歩であることを考慮して購入を見合わせた。
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次年度使用額の使用計画 |
パソコンの計算速度を慎重に見極めたうえで購入を検討する予定である。
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