研究課題/領域番号 |
15K03516
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武内 真美子 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80737742)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 女性研究者 / 自然科学分野 / 高等教育機関 / イノベーション / 人材育成 / 進路選択 / 女性のキャリア形成 / 企業の研究職 |
研究実績の概要 |
『第4期科学技術基本計画』(閣議決定 2011)「科学技術を担う人材の育成」の中で女性研究者の採用割合に関する数値目標の早期達成が掲げられ、今年度閣議決定された『第5期科学技術基本計画』でも人材の強化として、自然科学分野における女性研究者の採用に関する数値目標掲げられている。本研究は、このような社会・経済的背景のもと、自然科学分野における女性研究者のキャリアに関わる課題を抽出し、キャリア教育・支援の在り方を考察することを目的に実施した。今年度は、本研究の課題としていた以下の2つの仮説の検証を中心に研究を進めている。 自然科学分野を専攻する女性の中では、研究職以外の職でも他の分野の専攻者より賃金(生産性)が高いため、研究職が学生の選択肢として重要な位置づけではない可能性があり、もう一つは、研究分野において男性との競争力(資質・能力)が十分ではないか、もしくは企業の就労環境が十分ではないため、進学・就業の過程で研究職を諦めている可能性がある。 今年度は、研究代表者が所属する部署において実施された全学の大学院生を対象としたWeb調査の解析により、修士課程への進学理由、博士課程への進学理由に男女差がほとんどないことが明らかになった。つまり今後はより遡り、女子学生の大学へ進学する際の進路選択および大学院への進学を希望しない理由を明らかにする必要がある。一方で、民間企業および大学の研究者へのヒアリングでは、決して就労環境が不十分であるという情報は得られず、この点に関しては、今後も十分な調査が必要である。 研究成果の公表としては、高等教育機関における女性比率に関わる研究および理系学部出身の女性の賃金に関わる分析結果を中心とした報告を、国際学会で行った。また、査読つきの論文が公刊されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然科学分野を専攻する女性の中では、研究職以外の職でも他の分野の専攻者より賃金(生産性)が高いため、研究職が学生の選択肢として重要な位置づけではない可能性があり、もう一つは、研究分野において男性との競争力(資質・能力)が十分ではないか、もしくは企業の就労環境が十分ではないため、進学・就業の過程で研究職を諦めている可能性がある。これらの本研究が課題としていた仮説の検証を中心に今年度は研究を進めている。 まず、研究代表者が所属する部署において実施された全学の大学院生を対象としたWeb調査の解析により、修士課程への進学理由、博士課程への進学理由に男女差がほとんどないことが明らかになった。つまり今後はより遡り、大学へ進学する際の進路選択および学部生が大学院への進学を希望しない理由を明らかにする必要がある。一方で、民間企業および大学の研究者へのヒアリングでは、決して就労環境が不十分であるという情報は得られず、この点に関しては、今後も十分な調査が必要である。また、本学の研究者を対象とした調査も所属部署が実施しており、今後分析を進める予定である。 上記の研究の進捗状況に加え、研究成果の公表として、高等教育機関における女性比率に関わる研究および理系学部出身の女性の賃金に関わる分析結果の研究成果の公表を、国際学会で行い、査読つきの論文が公刊されている。派生した研究として、インターンシップと女性のキャリアとの関係および個票データを用いた女性のキャリアに関する国際比較研究もおこなった。この点からも、研究は順調に進捗していると言える。しかしながら、ヒアリング件数が不足しており、高校生および学部生に遡った統計解析も必要だと考える。また今後は、女性研究者のライフステージとキャリアの関わりはより緻密な分析が必要だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
高校生、学部生に対するアンケート調査のデータ解析により、科学技術を担う女性研究者の育成に必要な課題について、中等教育に遡りより精緻に解析する。同時に、アメリカの高等教育機関に属する研究者を対象に実施されたデータの解析によって、女性研究者のライフステージとキャリアの関連についても研究を進めていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度外部委託によって実施を予定していたWeb調査については、研究代表者が所属する部署で実施されたため、その経費の一部が次年度に持ち越されることとなった。国際学会へ参加をはじめとする研究発表および研究のために必要な物品の購入等は予定どおり遂行している。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された経費を用いて申請時の課題である学部生への調査の実施を検討すると同時に、女性研究者への支援について、データの整備が充実しているアメリカの高等教育機関を対象とした調査結果を入手して分析することも検討している。このデータの申請にかかる経費は40万程度と見積もっているが、入手することにより、研究の精度を高めることができると考えている。
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