研究課題/領域番号 |
15K03517
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山本 陽子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00326159)
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研究分担者 |
坂本 和靖 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (40470108)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 所得格差 / 女性就業 / ライフコース / ダグラス・有沢の法則 / 所得階層移動 |
研究実績の概要 |
平成28年度は公益財団法人家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」(1994-2013年分)を用い,妻の就業行動の変化とそれに伴う妻の所得の変化を明らかにするとともに,これらの変化が世帯の所得格差に与える影響を分析した。 分析の主な目的は以下の2つである。①世帯所得に対する妻の所得の役割の変化に着目し,妻の所得が世帯間所得格差に与える影響を確認する,②ワーク・ライフ・バランス施策がもたらす世帯所得格差の影響を確認する。 具体的には以下の分析をおこなった。女性のライフコース選択(第1子出産時の就業継続、無業継続、離転職)が夫婦所得の格差に与える影響を検証した。分析の結果、以下のことが明らかとなった。第一に,1990年代から2010年代にかけて,ダグラス有沢法則は弱体化し,夫の所得が妻の就業に与える影響は弱まった。夫高所得層でも妻就業率が上昇し,妻の所得が夫妻の所得階層を引き上げる「上方効果」(格差拡大効果)が確認された。第二に,出産後の就業継続は, その後の世帯所得を「上方移動(格差縮小・拡大とも)」を促進する効果を,また低所得階層への滞留を抑制(高所得階層への滞留を促進)する効果が確認された。世帯の所得格差縮小の観点からワーク・ライフ・バランス施策の中立性を高めることが重要であるといえる。 以上の結果は,ディスカッション・ペーパーとしてまとめ,当該年度において研究会で報告,平成29年度に学会で報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度は公益財団法人家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」(1994-2013年分)の利用申請をおこないデータの取得をした。この調査結果を用い,妻の就業と所得の変化とそれが世帯の所得格差に与える影響について,ジニ係数やHSCVを用いた分析をおこなった。また,パネル・データの特性を生かし,コウホートや年齢に着目した分析をおこなった。今後,分析の精緻化が必要であるが,第一段階の分析として,女性の就業が夫婦の所得格差に与える影響について,いくつかの知見を得ることができた。また,名古屋市在住女性500名に対するWeb調査を実施した。 研究期間の2年目にあたる平成28年度は,初年度の分析を発展させ,女性のライフコース選択が夫婦の所得階層移動に与える影響について実証分析をおこなった。また,初年度に実施したWeb調査を基に子育て中の女性の労働供給の決定要因を明らかにする分析をおこなった。上記の結果は,国内のいくつかの研究会で報告をし,平成29年度に国内と海外の学会で報告予定である。 平成29年度は,上記の分析を更に進め,妻の就業と所得が夫婦の所得格差に与える影響についてコウホートに着目した分析を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度と28年度におこなった実証分析を精緻化すること,また,追加の分析として,妻の就業と所得が夫婦の所得格差に与える影響についてコウホートに着目した分析を実施する予定である。また,Web調査の結果を用い,女性の就業行動が長期的な夫婦の所得格差に与える影響について分析をおこなう。 これらの分析結果を論文としてまとめ,学術雑誌への投稿,学会報告をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査分析補助として考えていた人件費が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
調査分析補助として研究補助を雇用する予定である。また,学会報告のための旅費として使用する予定である。
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