2015年度~2017年度は「消費生活に関するパネル調査」(公益財団法人家計経済研究所)の1993-2014年調査を用い,妻の就業行動の変化とそれが夫妻所得の格差に与える影響について分析をおこなった。具体的には,妻のライフ・コース選択(第1子出産時の就業継続)が夫妻所得の格差に与える影響を所得階層移動の観点から実証分析を行った。
分析の結果,以下のことが明らかとなった。第1に,妻が出産後も継続的に就業することは,夫高所得層において所得階層を上方に移動させる効果がある。第2に,育児休業の利用は夫高所得層で上方移動を促進する効果が大きい。これらの結果から以下の政策的インプリケーションを得ることができる。夫高所得層の妻に対して,就業支援をすることは夫妻所得の格差を拡大するため,ワーク・ライフ・バランス施策の制度の中立性を高めることが所得格差の観点から重要である。加えて,貧困対策の観点から夫低所得層の妻に対する就業支援を重点的におこなうことが期待される。
上記の分析結果を論文としてまとめ、国内の研究会(名古屋市立大学火曜研究会)と国際学会(2018 APEF Conference in SingaporeとThe 35th International Association for Research in Income and Wealth General Conference in Copenhagen)において研究報告をおこなった。また、学術雑誌への投稿をおこなっているところである。
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