前年度までの成果を踏まえて『基地と財政』(自治体研究社)を出版した。同書において、普天間飛行場を撤去する前提条件として名護市辺野古に新基地を建設する施策を日本政府がすすめてきたこの20年間、沖縄県や名護市の「同意」を獲得することを目的として講じられた財政政策のうち、沖縄振興一括交付金、米軍再編交付金及び再編関連特別地域支援事業補助金を取り上げて、その特異性を明らかにした。これらは、その主たる使途がソフト事業に拡大している点で共通している。しかし、その交付限度額の算定基準が騒音や基地面積など、いわば迷惑度に応じて決まるにもかかわらず、対象となる事業は基地が存在する故に余儀なくされる施策ではなく、基地の存在にかかわらずどの自治体であれ必要な施策である。つまり財政支出の原因と財政需要との因果関係がなく、財政運営の基本原則である「量出制入」に反している。また、新基地建設に対する政治的意見の相違によって増減するという、恣意的運用がなされている。とくに再編関連特別地域支援事業補助金は、交付対象を自治体ではなく任意団体である行政区とするという、地方自治をないがしかねないものであり、公的資金の配分に際して求められる公正かつ客観的な基準をそこなうものとなっている。結論として、このような特異性を有する手段でしか米軍基地設置の「同意」を獲得でない日本の安全保障政策の正当性に疑問を呈している。 比較対象として電源三法交付金のソフト事業化の特徴も解明した。この交付金は、原発建設時に多額の収入をもたらすというよりは、長期的かつ安定的な収入をもたらずものとなり、主たる使途は保育・消防など基礎的サービスが多くをしめるようになった。そして発電所施設周辺整備法にもとづく交付金よりは、電源特別会計法施行令による予算補助がほとんどをしめ、電源三法ではなく、電源二法に変質している。以上のような特徴を明らかにした。
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